概要
早くに両親を亡くし、兄とふたり、慎ましくも平穏な日々を送っていた雛姫だったが、少女はそこで、はじめて己の出生の秘密を知ることとなる。
島を統べる、ある一族に秘められた血の掟と島に伝わる荒ぶる神の物語――
双子の姉妹を輩出することで首座を保ってきた一族、巫部家の当主は、雛姫の亡き祖母の姉であり、雛姫は『ある資格』を持って生まれてきた娘だという。
巫部家において、有資格者は代々、双子の姉妹が《御座所》と《形代》の役目をそれぞれに担い、島に祀られる神を鎮める存在として民を治めてきた。
長年にわたり守られつづけてきた血の掟。
しかし、ある事情から、雛姫の祖母と母の代でそれが破られ
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!落ち着いた文体で綴られる、神代と現代を繋ぐ伝奇
金銭的な贅沢はないものの、穏やかな日常を送る少女と青年。
しかし、それは仮初の日々だった……。
前半の緩やかな日常からの転変。
そこからはジェットコースターのような展開。
主人公の少女が良い意味で「普通の」感覚なだけに、よりその背景の特異さが際立ちます。
そして最後の決断。それは彼女が普通の幸せを何より大切にしてからかだと思う、納得の選択でした。
物語も面白いのですが、どちらかというと難読な言葉もありながら、章の区切りや前後の構成が整っていて読みやすくなっています。
話自体の面白さに加え、そういった書き手としても参考になる作品でした。 - ★★★ Excellent!!!こちらを読み出した時、深夜から朝まで目が離せなくて寝不足になりました
物語のジャンルとしては現代ファンタジーですが、因習や伝承というホラーオカルトを持っています。
主人公は、民俗学者の真尋とその妹、雛姫。
真尋は雛姫を一人で守って育ててきたわけですが、そんな影のある男性が好きな方。刺さりますよ。
雛姫は素直だけど健気で勇敢。小学生にも関わらず大好きな兄を助けようと奔走します。
二人には得体の知れない島の風習や一族、果てには、鎮められた神……大きな障害が立ちはだかります。
先の展開が気になって気になってたまらない、濃厚で信頼感のおける物語。薄味の流行りものに飽きてしまった方にもお勧めできる一作です。 - ★★★ Excellent!!!情念を描ききる。
「耽読」という言葉がこれほど相応しい小説があるだろうか。
2016年、私がWEBで読んだ初めての長編小説がこれ。
12万文字のデジタル――当時の私にとってはハードルがあまりに高かった。だが手に取ってみれば最後、紙の本ではないことなどすっかり忘れて、気づけば一晩で読了していた。
カクヨムではまだ連載が始まったばかりだが、ぜひ続きを楽しみにしてほしい。
どこまでも物語を堪能できる。
最後まで見届けたその瞬間には、これが実存の神話・伝承の物語だと信じられるはずだ。
荒ぶる神の描写、雛姫のいじらしさとヒロ兄の想い。登場人物の心・背景の書き分けが本当に見事で、すべての人物を愛してしまう。そし…続きを読む