神の棲む島

西崎 仁

序章

碑文

  は人にして人にあら

  其は生にして生に非ず

  遙かいにしえより伝わりし 常夜とこよ御魂みたま御座所ござしょなり


  ながの流離は御魂の運命さだめ

  本意ほいならざりし血盟は 永訣えいけつを以て其をたがわしめん


  縟礼じょくれいを以て祀られしは 光にして闇の御魂


  撫恤ぶじゅつ暴戻ぼうれい

  乱世は安寧

  光華こうか朽廃きゅうはい

  輿望よぼう讒謗ざんぼうによりてついえ 悖戻はいれい慷慨こうがいを以て濁世しょくせを平らぐ

  穎悟えいご魯鈍ろどん

  邪は正

  其はしんにして邪鬼なり


  畢竟ひっきょう 此方こなた羈絆きはんによりて

    たっとき御魂を棲まわしむ 幽明混ざりし異境なり



  其は人にして人に非ず

  其は生にして生に非ず

  しかして死にも非ず


  ただただ、尊き御魂の御座所なり―――



     巫部島かんなぎじま石碑より

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