(5)
投与してもらった点滴が効いたのか、翌朝、すっかり熱の下がった雛姫はいつもの元気を取り戻して真尋を安堵させた。
しかし、昨晩の苦しみようが嘘のように爽やかに目覚めると、早々に起き出して精力的に家事をこなそうとしたため、真尋は慌ててそれを制止し、布団の中に引き戻さなければならなかった。
「だってもう完全に熱も下がったし、ほんとにどこもなんともないんだよ?」
「ダァメェだ! 家のことは俺がやるから、とにかく今日は1日寝てろ。夜まで熱が上がらなかったら、そのときは起きていいから」
「えー。でも、1日中ゴロゴロしてたら、怠けすぎて牛になっちゃうよぅ」
「普段コマネズミみたいに動き回ってるんだから、ちょうど釣り合いがとれていいだろう。こんなときぐらい頑張らなくていい」
「だけどヒロ兄、今日、このあとクーラーが届くんだよ?」
「設置工事なんか、たいして時間はかからん。業者が来たら、そのときだけわきに
今日はどうあっても布団から離れるのを許してもらえないらしい。覚った雛姫は、枕の上にがっくりと頭を落とした。
「――ヒロ兄」
「だからなんだ?」
「いっぱい心配かけて、ごめんね……」
タオルケットに頭まで潜って目だけを出しながら呟いた妹に、キッチンで雑炊を作っていた真尋は振り返った。そして、小さく息をつくと妹の枕元に来て膝をつき、乱れた布団をきちんと整えて掛けなおしてやった。ついでに扇風機の風向きも調整しなおす。
「玉子雑炊できたけど、食べるか?」
「うん」
「じゃあ、いま持ってきてやるから、そのまえにパジャマ新しいのに着替えとけ。汗びっしょりかいて濡れてるだろう」
「うん。そうする」
頷いた雛姫を見て目もとをなごませ、頭をくしゃりと撫でてから真尋は立ち上がった。
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