暁に揺れる花影

地方の高校を舞台に、二年生の瀬尾瑛士と有坂千紗は文化祭に向けた映像作品制作に挑む。平凡な日常、バラバラな価値観、協力に消極的な同級生たち——そこには一瞬で過ぎ去る青春の断片が散りばめられていた。
　真摯に走り続けることで自分の存在を証明したい鷹野洋介、華やかさと自己表現を求める豊橋麻里など、多様なクラスメイトたちの思いが映像制作を通じて交錯する。
　失敗や紛失、象徴だった花火の行方に揺れる二人は、仲間との絆を紡ぎ直し、自らの存在意義と向き合いながら、見過ごしがちな日常に潜む美しさを掬い上げていく。瑛士と千紗は、互いを支え合う中で淡い恋心を育み、揺らめく光の中で青春を焼き付ける一瞬を見出す。