概要
雪が降る日、私はひとりになる。
冬の帳村と呼ばれる小さな村で生きる十七歳の少女──新奈は、物心付いた時から孤独な日々を過ごしていた。新奈以外の、その村で生きる人たちは、雪が降ると当日の記憶を無くしてしまうからだった。自分と話したことも、一緒に過ごした時間も、雪が降ると全て忘れられる。そんな孤独な日々を過ごす内に、新奈はそこにあるはずのない白い部屋をみるようになる。
村の中には、この世に生まれてきたことすら親に忘れられてしまった子供達が集められている、妖精たちの庭と呼ばれる児童養護施設があり、新奈は物心付いた頃からその施設で暮らしていた。ある日を境に同じ施設で暮らす新奈の彼女である沙羅、そして友人である湊と共に、施設に対して違和感を抱くようになる。新奈達の胸の中でちいさな芽を出したそれが疑心へと移り変わった時、施設の本
村の中には、この世に生まれてきたことすら親に忘れられてしまった子供達が集められている、妖精たちの庭と呼ばれる児童養護施設があり、新奈は物心付いた頃からその施設で暮らしていた。ある日を境に同じ施設で暮らす新奈の彼女である沙羅、そして友人である湊と共に、施設に対して違和感を抱くようになる。新奈達の胸の中でちいさな芽を出したそれが疑心へと移り変わった時、施設の本
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!悲しみと苦しみの叫びが聞こえる
雪が降るとその日の出来事をすべて忘れてしまう村。その中で、唯一、忘れることのできない新奈の苦悩が繊細で濃厚な文体で描かれています。
鮮烈な激情、色濃い苦痛、叫び出したいほどの悲しさ。
その圧倒的苦悩は彼女の精神を蝕み同性の恋人・沙羅がいてくれたからこそ耐えられていますが、沙羅すらも雪による記憶障害には気がついていません。
「沙羅、お願い。私のことを忘れないで。」
新奈の苦しみは雪のことだけではありません。
他の人には見えない螺旋階段や白い部屋といった幻覚も……。
そして、徐々に施設と職員の奇妙な部分に気がついていき……。
心抉られるな心理描写と、不可思議でどこか不気味な世界観。
村…続きを読む