悲しみと苦しみの叫びが聞こえる

雪が降るとその日の出来事をすべて忘れてしまう村。その中で、唯一、忘れることのできない新奈の苦悩が繊細で濃厚な文体で描かれています。
鮮烈な激情、色濃い苦痛、叫び出したいほどの悲しさ。

その圧倒的苦悩は彼女の精神を蝕み同性の恋人・沙羅がいてくれたからこそ耐えられていますが、沙羅すらも雪による記憶障害には気がついていません。

「沙羅、お願い。私のことを忘れないで。」

新奈の苦しみは雪のことだけではありません。
他の人には見えない螺旋階段や白い部屋といった幻覚も……。

そして、徐々に施設と職員の奇妙な部分に気がついていき……。

心抉られるな心理描写と、不可思議でどこか不気味な世界観。
村の秘密。施設の意味。新奈の運命。
何がどのように絡み合い、どのような結末を迎えるのか。

注目の作品です。是非、ご一読ください。

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