六月、それから
あるカップルの話
リビングで後輩の書いた小説が掲載された雑誌を読んでいると、上半身裸の祐樹さんが、濡れた髪の毛をタオルで拭きながらリビングまで来て言った。
「お風呂上がったよ」
「うん、すぐ入るね」
俺がそういうと、祐樹さんは鼻歌を歌いながら洗面所へ戻っていった。ドライヤーを取りに行ったのだろう。
祐樹さんの後ろ姿を見ながら、出会ってから随分と時間が経ったことを実感する。
お腹のたるみも、目じりに寄った皺も、俺と祐樹さんが歩んできた時間を象徴しているようで、すべてが愛おしいと思える。
このままずっとこの生活が続けばいい。
そして二人でおじいちゃんになって、お互い老けたね、なんて言って笑うのだ。
俺と祐樹さんを取り巻くものは出会ってから何一つ変わっていない。あるのはただ二人で歩んできた時間だけだ。
誰にも理解されずとも、誰にも祝福されずとも、社会が変わらなくても、俺たち二人の形が認められずとも。
俺たち二人は、それでも一緒に生きていくのだ。
それでも君と、生きていく。 朝雨さめ @same_yukikaze
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