第26話「世界滅亡の危機」

「はぁ、はぁ、何が起こったんだ?」


 クライ達は、謎の監獄空間に居たはずだが、気が付いたら魔族の山脈に立っていた。


「おい、クライ、メライ、見ろよ。何なんだアレは?」


 ワルツが指を刺すと、その方向には暗黒の球体がヘルラの屋敷を飲み込み、次第に膨張している光景が広がっていた。


「なんなんだアレは? クルミはどうなったの?」


「ぐ……何とか……脱出できたか……」


 ヘルラの声が聞こえ、彼女の方を見ると、彼女は下半身を失って倒れていた。


 クライはすぐにヘルラに駆け寄って介抱した。


「ヘルラ、何が起こってるの?」


「せ、説明したいが……取り敢えず今は逃げろ……足を失った……悪いがワタシを担いでくれ。この山脈はもうおしまいだ……」







 クライ達はブレイクキラーの拠点である小屋にヘルラを連れて、ヘルラから事情を聞くことにした。


「はぁ、くそ、下半身を失うと、こうも不便だとは……いいか、よく聞けクライ、メライ、ワルツ、もう魔王がどうとか言ってる場合じゃなくなってしまったぞ」


「なんでも良いから何が起こったのか説明してよ」





 


 クルミが使ったのは世界災害魔術。この魔術は既存の世界を破壊して新たな世界を創造する危険な魔術だ。


 つまり、このままだと、この世界は消滅して、クルミが作り出した新たな世界『断罪処刑監獄ワルプルギス』と言うワタシですら知らない世界が誕生してしまう。


 なんでクルミが、こんな危険な魔術を使えたのかまでは分からない。だが、これだけは確信して言える。


 ワタシは、踏んではいけない猛獣の尾を踏んでしまったようだ。


 魔王の事は後回しにして、クルミの世界災害魔術を止めないと、この世界は消滅する。


 ワタシも世界災害魔術の恐ろしさは知識でしか知らないが、持って五日後に世界は消滅して、この世界の住民全てがクルミの世界に閉じ込められるぞ。


 クルミの世界の法則やルールは知らないが、断罪処刑監獄なんて名前だ。あの世界に閉じ込められただけで詰みだ。


 ワタシは残された力のみで、お前達を脱出させたが、その代償に下半身を失った。


 クルミの世界はヤバい、ワタシも下半身を失った程度で済んだのは奇跡だ。


 ワタシも協力するから、クルミの世界の膨張を止める手段を考えるぞ!







「止めるって、一体どうやって?」


「それを今から即興で考えるしかない。それに、お前達だってクルミが世界を滅ぼすのを見たくないだろ? ワタシも魔王から解放されたいが為にお前達に試練を与えたつもりだが、こんな結果になったのはワタシの責任だ」


 クライ達が沈黙していると、クライの背後から聞いた事がない陽気な声が響き渡った。


「ンフフフフ、やってくれましたねヘルラ。アナタのせいで世界存亡の危機になるなんて、魔王様はお怒りですよ?」


「!?」


 クライはすぐに振り返って後退すると、いつの間にか道化師のような痩せた男が立っていた。


「く、やっぱり魔王には全て筒抜けか、ワタシを殺しに来たのか『ペイガ』?」


「ンフフフ、ボクはアナタを殺す為に来たのではない。世界災害魔術を止めるように魔王様から直々に命令が下ったのです」


 クライ達が身構えていると、道化師の男はクライ達にお辞儀した。


「ンフフ、これはこれは、見目麗しい人形の皆様、初めまして、ボクは魔眼剣豪『ペイガ』魔王軍四天王の一人ですが、今回は一時休戦としましょう」


 突如現れた新たな魔王軍四天王に警戒しながら、クライは魔剣を抜こうとしたら。


「うっ!?」


 喉に冷たい感触を感じた。刃を突きつけられてるような殺気。目の前の魔眼剣豪ペイガは腰に差している剣を抜いてないのに、まるで抜いてるかのような殺気を醸し出していた。


「ンフフフフ、レベルは上でも、剣の技能はまだまだですね人形さん」


 勝てない、レベル以前の問題に純粋な技術では目の前のペイガには勝てないと直感したクライは、魔剣の柄から手を離した。

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