第24話「燃え続ける炎」

 私には家族なんて居なかった。


 私を愛してくれる人なんて居なかった。


 生まれた時から一人、生まれただけで罪子として扱われ、社会のゴミとして扱われて、毎日泥水をすすって生きるのがやっとな生活だった。


 ーー私が何をした? 罪子って何?


 毎日路地裏のゴミを漁って生きるのがやっとの生活。


 周囲が私を生きたゴミとして見る中、私は何度も、その光景を求めた。


「ママー! 私、アイス食べたーい!」


「まぁまぁ、じゃあ、お母さんが代わりに作ってあげる!」


「やったー!」


 家族、親、欲しい、誰か、私を、愛して。


 目の前の子供には親が居て、愛されるのが当たり前で、なんで私には家族が居ないんだ!


 私を産んだ親はどこに行った? 娘がこんなみじめな人生を歩んでるのに、なんで誰も助けてくれないんだよ!!






「う、ああああ!! 燃えろぉ! 親が居る子供なんか燃えろ! 燃えかすになれ! 私以下のゴミになれぇ!!」


 最低だ。殺戮人形として生まれ変わった私の中に、こんな醜悪な記憶と願望が眠ってたなんて。


 これじゃ、これじゃ、明るいクライなんて最初っから居なかったようなものじゃないか。


 結局、私は人間だった頃は罪子として扱われ、今は人形として人類の為に戦っている。


 ーー私を愛してくれなかった人類なんて守る価値あるの?


「守る価値? そんなもの、そんなもの……」


 言葉が出ない。これを言ったら何もかも終わってしまう気がする。私の唯一の取り柄である明るさが消える。


 憎悪の炎に身を委ねた悪の人形に……。










「クライお姉ちゃんって太陽みたいだね」


「え、どうしたのメライ?」


 これは、この記憶は、メライとの記憶? いや違う、私が作った家族ブレイクキラーとの記憶だ。


「あーそうだな。無駄に明るくて太陽みたいにウザイが、なんかお前と居ると嫌な気分にならないんだよなぁ」


「えー? ワルツも言うの? 私は自分が太陽だなんて思った事ないよ?」


 あ、あぁ、そうだ、そうだった。


「うーん、クルミはどう思う?」


「そうねぇ、クライが太陽かは、さて置いて、私達がブレイクキラーと言う家族ができたのは間違いなくクライのお陰ね。こうして四人が殺戮人形として出会えたのは、きっと奇跡だと思うわよ?」














「ネェ? セカイ、モヤス?」


 異形のバケモノが私に問い掛けるが、この記憶を思い出しただけで、私の、私達の勝ちだ!


「世界は、燃やさない! 私は殺戮人形No.44のクライだ! 人間だった頃はゴミだった? 知ったことか! 人間としての私は死んだ! 今ここに居るのは、ブレイクキラーを立ち上げたクライ! 太陽の人形だ!!」


 そう宣言すると、周囲の灼熱地獄が消えて、頭上に太陽が出現した。


 その太陽を見た直後、私の心の闇を具現化したバケモノは苦しんでいた。


「ヤ、ヤメロォ!! オマエニ、タイヨウ、ハ、ニアワナイ!!」


「似合う似合わないかじゃない! 私は魔王を倒して家族と共に平和な世界で生きる為に、太陽として生き続ける!!」


 その覚悟を読み取ったのか、手に持ってる魔剣イフリートが、闇の炎ではなく光の炎を発し始めた。


「さようなら、過去の私……『太陽浄化剣サンライトブレード』!!」


 光に満ちた炎の剣で、私は自分の心の闇を斬り捨てた。


 これが私の覚悟、私の決断だ!!


「ア、ガ、ミトメナイ、ミトメナイゾォォォ!!」


 目の前のバケモノの断末魔が、人間だった頃の私の叫びかは分からないけど、これだけは言える。


「認めたくないなら、何度でもかかって来い。家族の絆がある限り、私は負けない」

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