第21話「孤独の終わり」
なんだっけか、いや、今私は雪に埋もれてんのに、なんでアイツと出会った記憶が蘇るんだよ。
「おいーす! こんなところで何してんの?」
木の下で寝転がっていた私に対して、燃えるような赤髪が目立つ殺戮人形が私の隣に立っていた。
「別に、私は戦いたくないから一人で隠れてんだよ」
「え、殺戮人形なのに戦わないの?」
「悪いかよ」
「いやいや、責めてないけど。そっかぁ、君みたいな人形も居るんだぁ……よし! じゃあ、こうしよう!」
と言って、赤髪の殺戮人形は私の腕を掴んで私を引き寄せた。
「おま、何するんだよ!?」
「あはは! 私は殺戮人形No.44のクライ! 今家族募集中なんだ! 一人だと寂しくない? 私の家族になってよ!」
「何言ってんだ、お前!? 頭おかしいのか!?」
「おかしいのは、そっちだよ。本当は一人が嫌なくせに。人間も殺戮人形もそばに誰か居ないと寂しいでしょ? ね、君の名前を教えてよ」
あー、この時、この時に人間だった頃の名前を言えてたら良かったなぁ。
「殺戮人形No.84ワルツだ」
「ワルツか! 素敵な名前だね! なんだか一曲踊りたくなる響だ!」
(なんなんだコイツ?)
今まで出会って来た殺戮人形とは違う、まるで太陽のように明るい人形だった。
「あ、おかえり、クライお姉ちゃん」
みすぼらしい小屋の中に入ると、フードで目元を隠した人形と、椅子に座って編み物をする人形が居た。
「たっだいまー! 見て見てメライ、クルミ! この子はワルツ! 今日から我が家の家族の一員になります!」
「はぁ!? ちょっと待てよ! まだOKすら出してないだろ!!」
なんなんだコイツは、次第に苛立ちが募っていく。
そんな事を考えていると、メライと呼ばれた人形が、こちらに近付いて来た。
「え、えと、ワルツさん? 今日から、よろしくね」
「いや、だから……あー、もういいや、野宿生活も飽きた頃だ。勝手にこの小屋を寝床にさせてもらうぞ」
それから翌日の朝だった。なんだか美味しそうな匂いがしたので、私は寝床から起き上がった。
「ん? なんか作ってるのか?」
私が寝床から起き上がると、机の上に殺戮人形が生きる為に必要な生き血が皿の上に乗っていた。
「じゃじゃーん! クライお姉ちゃん特性のゴブリンの生き血スープだよ!」
「……え、お前、生き血を皿に乗せたのか?」
「ふっふっふ、ワルツよ、このスープはただのスープじゃないぜぇ? まぁ飲んでみてよ」
「……」
私が今まで生き血を摂取するとしたら、モンスターに直接噛み付いたり、倒した魔族の死体に顔を突っ込んだりしてたけど、ここまで人間らしい料理を目の前にするのは殺戮人形になってから初めてだった。
私は初めて握るスプーンを吟味しながら、恐る恐る生き血のスープを口に運んだ。
その時の私の感想は、至って質素だった。
「あ、美味い」
「でしょ〜? この私、クライお姉ちゃんは、生き血にハーブを入れたり、他にも隠し味を満載に入れたんだぜぇ?」
その時だった。この時はなんでか理解できなかったが、今の私なら理解できる。
こう言う、普通の人間としての家庭の料理を味わいたかったんだ。
「う、うぐ」
「えぇ!? ワルツ、なんで泣くの!?」
「わかんねぇ、わかんねぇけど、うぅ、最高に美味いなこれ」
あぁ、そっか、この時、私は孤独から解放されて、コイツらの家族になれたんだ。
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