第20話「孤独の試練」
寒い、冷たい、体が動かない。
誰も居ない、誰も私を助けてくれない。
「なんじゃこりゃぁぁぁ!?」
ワルツが扉を潜ると、そこは猛吹雪が吹き荒れる雪原だった。
目の前がホワイトアウトしてて、何も見えない。
ワルツは、杖を構えて、いつでも魔術が使えるようにしてた。
「お、おら! 来いや! 私の心の闇かなんか知らないが、ぶっ倒してやる!!」
しかし、ワルツの言葉は吹雪に掻き消された。
誰も居ない。モンスターの姿すら見えない。
一人だ。
「……お、おーい、居ないのかー? で、出てきて良いぞー?」
震え気味に呼び掛けるが、本当に誰も居ない雪原だった。
仕方なく、ワルツは歩き出した。
「ぜぇ、はぁ、こ、この雪原、どこまで続くんだよ……」
誰も居ない雪原を果てしなく歩き続けたが、モンスターの姿は無いし、人間も居ない。
目の前は白一色だった。殺戮人形だから凍え死ぬ事はないが、それでも精神的に来るものがある。
「頼むよー、戦ってやるから出てこいよー。と言うか、これ絶対にヘルラの悪ふざけだろ!? なーにが心の闇を具現化したモンスターだ! 何にも居ないじゃないか! これだとまるで……まるで?」
そこで、ワルツの足が止まった。
「あれ? ちょっと待てよ? 私は、この雪原を知っている? 初めて来たはずなのに、知ってる? なんだ、この記憶?」
頭の中で封印されていたワルツの記憶が蘇って来た。
罪子をここに放置か。
あぁ、何なら賭けをしないか? この罪子が、この雪原を渡り切れるかどうかさぁ?
それ面白いな! ははは! じゃーな嬢ちゃん! 頑張って俺達のキャンプまで来いよ! そしたら、あったかいスープを飲ませてやる!
ーー嫌だ、置いてかないで、私が何をしたの? 罪子って何? ねぇ、こんな所に置いてかないでよぉ!!
私は歩いた。誰も居ない雪原をひたすら歩いた。生きる為に、あったかいスープを飲む為に、あぁ、でも、冷たいなぁ。
足が凍る、足の感覚が消える。手の感覚が消える、何も悪い事してないのに、ひとりぼっち。
ーーあぁ、なんで、こんな目に遭ってるんだろう? お母さんとお父さんはどこ?
「うぁぁぁ、そうだ、私は、何も知らずに雪原に放置されたんだ! う、うわぁぁぁ! お母さん! お父さん! ねぇ、どこ! あぁぁぁ一人は嫌だぁぁ!!」
とうとう孤独に耐えられなくなったワルツは、そのまま雪原の上に倒れてしまった。
体の上に雪が積もっていく、最初は軽いが段々と重くなっていく。
「あ、が、いや、だ、このまま一人はいやだ、人間でもモンスターでも良いから、誰か出てきてくれ……頼む……」
しかし、そんなワルツの願いすら吹き飛ばすように猛吹雪がワルツの人形の体を容赦なく凍らせていく。
殺戮人形だから凍え死ぬことはないが、一番怖いのは、意識を保ったまま氷漬けになること、意識を持ったまま雪に埋もれること。
「た、たすけて、だれか……」
最早、目まで凍ってしまったワルツの上に雪が積もっていき、ワルツの姿は見えなくなってしまった。
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