第9話「解放惨劇」
「今回は私は戦闘に参加できなかったから、私が作った服が役に立って良かったわ〜」
クルミは、今回のペルザ討伐戦に参加できなかったからか、ペルザに囚われていた人間と殺戮人形達を率先して解放し、全員を魔城のロビーに並べていた。
クライ、メライは、人間と殺戮人形達の治療を、ワルツは通信魔術で人類最後の帝国である『エルスクリア帝国』に居るカシャと呼ばれる殺戮人形に救援依頼をし、クルミは持ってきた衣服で人間と殺戮人形達に着せるなど、それぞれが役割分担をして介護していた。
「うーん……」
「どうしたの? クライお姉ちゃん?」
人間と殺戮人形達の手当をしていたクライが唸り声を上がる中、疑問に思ったメライが問い掛けた。
「いや、人間も殺戮人形も、確かに戦った痕跡があるし、その時の治療すらされてないけど……なんか、拷問された痕跡が一つもない。ペルザは何がしたかったんだろう?」
「え、えと、ま、魔族ならではの悪趣味、じゃない?」
「なのかなぁ?」
疑問に思う中、カシャと連絡していたワルツが戻って来た。
「おーい、カシャと連絡取れたぞー、すぐにエルスクリア帝国から人間と殺戮人形で構成された救援部隊が来るそうだ。私達だけじゃ、ここに居る全員を地上に戻す事はできないからな。全く、ペルザの生き血で祝杯だーとか言ってた人形は、なんでペルザを消し炭にしたのかなぁ?」
ワルツに詰め寄られて、クライは申し訳なさそうに両手を合わせて謝罪した。
「ほんんんんんんとうにごめんなさい! ピクニックって言ったのに、何の収穫もなくて大変申し訳ない!」
「いや、責めてるわけじゃねーよ。確かにペルザの生き血は手に入らなかったが、こうして仲間である人間と殺戮人形達を救出する事ができた上に、四天王の一角を落とした。カシャからは、人類の代表者が直々に褒美をくれるってさ」
「人類の代表者? 誰? 王様とか?」
「さぁ? 人間の王様が、私達人形をどう思ってるか分からんが、まぁ偉い人から褒美が貰えるんだ。派手なピクニックだったが、それなりに褒美は弾むらしいぜ?」
報酬の話になると、ワルツはいつも悪い顔になる。
そんなやり取りをしていると、クライ達が手当をしていた人間の男性が目を覚ました。
「う、ぐ、い、痛い? あれ? お花畑は?」
「どうもっす! 殺戮人形No.44のクライです! 人類の代理として魔天聖母ペルザを討伐してアナタ達を助けに来ました!」
「え? 殺戮人形? 何それ? てか、ペルザ様は、死んだのか? お前達が殺したのか!?」
「え? あ、うん」
予想外の反応に戸惑うクライだったが、次の瞬間、人間の男性は予想外の行動に出た。
クライの背中に差してある魔剣を奪おうとしたのだ。
想定外の動きだったが、相手は人間だったので、クライは簡単に男性を取り押さえたが、男性は断末魔に近い叫びをあげた。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!! 現実、ここは現実なのか!? なぁ、嘘だと言ってくれ! 俺はまだ夢の世界に居るって言ってくれぇぇぇぇ!!」
「は? 夢? 寝ぼけてるの? すぐに救援部隊が来るから安静にしてて」
「救援? まさか、エルスクリア帝国の連中が来るのか!? 嫌だぁぁぁぁ!! 殺してくれぇ! 頼むから殺してくれぇぇぇ!!」
男性の悲鳴を聞いた影響か、他の人間や殺戮人形達が目を覚ました。
「え? あれ? ここどこ? ペルザ様の魔城? なんで私達がここに居るの?」
人間の女性がペルザの事を様付けで呼ぶ事に違和感を感じたクルミが優しく語りかけた。
「ペルザに洗脳されてたのね? 大丈夫ですよ。私達がペルザを討伐しましたから、今からエルスクリア帝国から救援部隊が来ます」
「え? ……うわぁぁぁぁぁぁ!!」
女性が立ち上がると同時に走り出したかと思うと、クルミですら予想できなかった行動を起こした。
「え?」
なんと、人間の女性が魔城の玄関から飛び出したかと思うと、ワルツが作った回廊ではない方から浮遊大陸から飛び降りた。
もちろん、下には女性を守る物なんて何もない、つまりーー。
「じ、自殺?」
クルミが、その言葉を発すると同時に外から何かが潰れた音がした。
ここから先は、クライ達にとって一生忘れられない惨劇が起こるのであった。
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