第13話「残酷な夢の世界」
人間の王であるバルエンドの話が長すぎたのでクライなりに要約すると、まずペルザは捕まえた人間と殺戮人形達に夢を見せてたらしい。
なんでも、あらゆる苦痛から解放された真の幸福な夢の世界に居たそうだ。
その世界では、ペルザが神で、それぞれの理想とする世界で幸福な人生を歩んでたらしい。
つまり、ペルザは人間と殺戮人形を幸福な夢の世界に閉じ込めて、彼等を管理してたそうだ。
元々ペルザは天界の神だったが、魔王軍が攻めてくる前は人間達が、お互いに争っていたのを見て、天界に居た頃のペルザは主神に何度も人間同士の争いを止めるように懇願したが、主神を含む他の神々は下界の
主神や神々の態度に絶望したペルザは、自ら堕天して、魔王軍に加担。
人類共通の敵である魔王軍に関与し、人間達を殺さずに夢の世界で管理してたそうだ。
つまり、一度でもペルザの夢の世界に閉じ込められ、現実に戻ったら、極度のギャップに苦しんで自害するらしい。
と、ここまでの情報を得るのに二週間もかかったそうだ。
バルエンドは咳払いをしながらクライ達に告げた。
「ペルザは元々魔王軍の幹部ではあったが、人類の敵対者ではなかった。だから、お主たちのレベルで勝てたんじゃろうな」
「え? どう言う事ですか?」
クライが質問すると、バルエンドは申し訳なさそうな声で真実を告げた。
「仮にも堕天したとは言え、人間や殺戮人形が神に勝てるわけがないし、かつての人間の勇者がペルザに勝てたのも、勇者のレベルが高かっただけの事。お主達ブレイクキラーがペルザ相手に戦って生き残れたのは、単にペルザ本人が本気で戦ってなかっただけじゃろう」
「そ、そんな、アレで本気じゃなかった?」
クライの隣でメライが驚愕の声を漏らしたが、それでもバルエンドは続けざまに話を続けた。
「ワシも人間の冒険者だった頃は、ペルザとは別の神と戦った事があるが、その神は怒り狂う憤怒の化身であり、ペルザのような温厚な性格ではなかった。その時のワシのレベルは100だったが、それでも仲間を二人も失って、ワシは左腕を失った。今生き残ってる人類の中で、神の恐ろしさを知ってるのはワシだけじゃろう」
「マジかよ、私達の平均レベルは70で、バルエンド陛下がレベル100でも勝つ事が困難だった? 私ら、よくペルザ相手に生き残れたな」
神の恐ろしさを改めて痛感したワルツは、自分達がどれだけ無謀な作戦に出たのかを痛感したが、バルエンド本人は、それを責めるつもりは無かった。
「ほっほっほ、人形とは言え、まだまだ人間の子供と何一つ変わらないのぉ」
「子供……ハッ!?」
バルエンドの言葉を聞いたクルミが、バルエンド本人に直接聞く事にした。人類の代表者であるバルエンドと
今の内に聞いてみよう、ペルザが残したヒントについて。
「バルエンド陛下、私は殺戮人形No.32クルミと申します。率直にお聞きしたいのですが、陛下は、私達殺戮人形の起源や正体、そして開発者を知ってますか?」
固唾を飲んで、どんなセリフが飛んでくるのか緊張するクルミ。
しかし、意外な返答だった。
「ぬ? ワシは知らぬぞ? この通り肉体はすでに機械と成り果てて、玉座から立ち上がる事すら不可能な状態じゃ。たしかに魔王軍に対抗する兵器を作ってくれとは言ったが、まさか殺戮人形と言うものが出てくるとはのぉ。力になれず申し訳ない」
「……いえ、お返事をいただき、誠にありがとうございます」
クルミの中で、バルエンドはシロと確定したが、殺戮人形の正体を知ってる者は、この国のどこかに居る。
この謁見が終わったら国を探索ーー。
「さて、次なる魔王軍四天王の討伐の話をしよう。ペルザ討伐は愚策だったが、良い成果じゃった。後で褒美を取らせよう」
「お言葉ですが、陛下……!?」
すると、クルミにのみ向けられた殺気を感じた。
言葉ではないが、その殺気からは『これ以上喋るな人形風情が』と言う殺意を感じた。
誰? この場の誰が、これ程までの殺気を?
困惑するクルミの隣でワルツがクルミの脇腹を肘で突いた。
「おい、どうした急に?」
「え、えーと、何でもない……」
「?」
すると、さっきまで感じていた殺気が消えた。
クルミの中では確信していた。この玉座の間に殺戮人形の正体を知ってる者が居ると。
バルエンドですら殺気に気付いてないようで話を続けだした。
「? ふむ、先の戦いの疲れが残ってるのか? まぁ良い、次なる相手は、魔王軍四天王の一人、魔童作家『ヘルラ』じゃ」
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