第6話「魔天聖母」
現実は怖い。現実に幸福なんてない。なんで生まれたんだろう? 助けて、誰か助けて。
「その願い、この魔天聖母ペルザが叶えてあげましょう」
「到着ー!」
クライ達は螺旋階段を駆け上がり、一気に屋上である魔城の玉座の間に来た。
空は曇っているが、そこから差し込む光が、邪悪な存在を映し出していた。
修道女のような姿をした大人の女性で、両目が焼け
間違いない、コイツが四天王の一人、魔天聖母ペルザと理解した。
目が見えてるのか分からないが、玉座に座ったままクライ達に向けて言い放った。
「まぁ、よく来たわね。勇敢なる人形さん達、ここまで来るの大変だったでしょ?」
「うん、ワルキューレ。アレはゴブリンの大将とは違う存在だった。明らかにゴブリンの大将よりも強い。アレで雑兵レベルだって言うから、本当に事前にレベル上げてて良かった」
そう言うと、クライは炎に燃えたぎる魔剣の切先をペルザに向けた。
「悪いけど、今日は家族総出のピクニックなもんでね。アンタには悪いけど、我等『ブレイクキラー』と人類の為に
「……ふふ、あぁ、思い出すわね。かつて人間の勇者の皆様も同じ口上を言ってたわ、ふふ、ふふふふ」
目の前で笑うペルザに対して、クライの背後からクルミがペルザに問い掛けた。
「無意味な問答かもしれないけど、念の為に聞きます。魔天聖母ペルザ、アナタ達、魔王軍四天王は勇者に倒されたはず。それなのに、どうしてアナタは今も健在なの?」
「まぁ、大人しそうに見えて内に狂気を含んだ人形さん。その回答は簡単、魔王陛下が存命する限り我々は何度でも復活する。つまりアナタ達が倒した魔族も、魔王陛下を倒さない限り何度でも復活するのよ」
「これはこれは、ご丁寧に回答いただき、ありがとうございました聖母様」
クルミは皮肉を込めてスカートの
それが見えてるのか分からないが、ペルザは玉座から立ち上がらずにクライ達に語り掛けた。
「さて、アナタ達は他の人形さん達と違うみたいね? 確かにアナタ達なら私を倒せるでしょう。なので……そうね、命乞いしても良いかしら?」
「はぁ?」
予想外の返答にクライは魔剣を下げてしまった。
「それ本気?」
「えぇ、本気と同時に、ここがアナタ達の運命の分岐点と言っても過言ではないです」
「???」
目の前の魔族は何を言ってるのか? 拍子抜けしたクライだったが、気を取り直して魔剣を再び構えた。
「悪いけど、魔族の命乞いなんて信用できない。そうやって不意を突いて、沢山の仲間が犠牲になったからね」
「そう、ならば」
魔天聖母ペルザが邪悪な笑みを浮かべたと同時に彼女の右腕が光ったかと思うと、そこには一本の巨大な槍が出現した。
「私は聖母として、アナタ達を救済しましょう」
クライ達が臨戦態勢になる中、一人だけ動揺している仲間が居た。
「クルミ?」
ワルツが異変に気付いてクルミに声を掛けたら、クルミは動揺を隠しきれないぐらいに困惑していた。
「嘘、目の前の魔族から人類の脅威を感じない? これじゃ、私の処刑魔術は発動できない!」
「……」
いつかクルミの処刑魔術のカラクリを当ててやろうと考えていたワルツだったが、ペルザ戦ではクルミは戦えないと判断したワルツは、目の前のクライとメライに向けて叫んだ。
「おい、二人とも! クルミはお腹壊しちゃって動けないみたいだから、私達三人でペルザを倒すぞ!」
それを瞬時に理解したクライとメライは、お互いの武器を構えた。
「行くよメライ!」
「うん! どこまでも付いて行くよ、クライお姉ちゃん!」
魔天聖母の圧倒的な力と威圧感に耐えながら、二人は突撃し、ワルツは魔法の杖を構えながらクルミにだけ聞こえる声で言った。
「貸し一つだからな」
「……ごめんねワルツ、最強の殺戮人形が使い物にならなくて」
「泣き言は後で何度でも聞いてやるから、お前は下がってろ!」
ワルツは、クライとメライを支援する為に呪文を唱え始めた。
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