第18話「灼熱の試練」
燃えろ燃えろ、何もかも燃えろ、お前達なんて、一匹残らず消え失せろ。
なんで、私が灰にならなきゃならない? お前達が灰になれよ。
「ん? 何この声?」
クライが扉を潜り抜けると、そこは灼熱の炎の海だった。
人間もモンスターも、等しく燃え尽きた灼熱地獄だった。
「アァァァァ、アツイ、アツイ!!」
クライの目の前に居たのは、下半身が蛇で、上半身が鬼で、腕が9本もある異形のモンスターだった。
「これが、私の心の闇?」
クライは魔剣イフリートを抜いて構える。
最初っから全火力で叩き込む。神であるペルザすら焼き殺した炎系魔術最高位のプロメテウスを魔剣イフリートに乗せた渾身の一撃。
「新必殺技『プロメテウス・インパクト』!!」
プロメテウスの炎が乗った重たい斬撃を、目の前のモンスターの脳天に叩き込んで、たった一撃で真っ二つにしたが。
「アァアガァカァガバ!!」
「!?」
モンスターはすぐに再生し、攻撃してくるかと思ったら、9本の腕全てを使って、クライに指を刺した。
「オマエ、ナンデ、ホノオ、ナンテ、ツカッテル?」
「知らないよ。生まれた時から使えてんだから」
「……ジブンノ、シイン、ヲ、ツカウノカ?」
「シイン? もしかして死因の事?」
「アァァァソウダソウダ! オマエハ、モヤサレタ! モヤサレテ、ニンギョウ、ニ、ナッタ!! クケケケケケ!!」
攻撃してくるわけじゃなく、ただただ目の前のバケモノが何を言ってるのか分からないが、クライが言える事は一言だった。
「ウザいんだよ、バケモノが」
普段の明るいクライからは想像できない程に冷酷な一言が出てしまった。
何回斬った? 攻撃してくるわけじゃなく、ただクライをバカにしてくるだけの怪物、ウザイ、ウザイウザイウザイ!
「さっさと消えろ!!」
どうしようもない怒りに身を任せて目の前の怪物を斬るが、それでも怪物は倒せない。
すると、脳裏に何か流れてきた。
ーーうわぁぁん! ごめんなさいごめんなさい! 生まれてきて、ごめんなさい! だから燃やさないで! お願いだから燃やさないでぇ!!
「なに、この声?」
「オモイダシタ?」
気が付くと、クライは怪物の9本の腕の中に居た。
「ネェ、コノママ、イッショニ、セカイ、モヤサナイ?」
「な、にを」
ーー本当は燃やしたいくせに、視界に映る生命体を全て燃やしたいくせに、いつもいつも理性でそれを否定している。いつまで良い子ちゃんでいるつもり? そろそろ飽きない?
「うるさい、うるさいうるさいうるさいうるさい」
「ネェ、モヤソウヨ」
「黙れぇぇぇぇぇぇ!!」
すると、クライを抱きしめている怪物ごと、クライは業火に焼かれてしまった。
「あ、あぁぁ、嫌だ、この感覚、思い出した。私は、私は……人間達に燃やされた」
この泥棒! 薄汚いガキ! おい、このゴミをつまみ出せ!
ーーなんで、こんな扱い受けなきゃならない?
えー、この罪子を極刑とします。大衆の前で燃やすとします。
ーーやめて、やめて、お願いだから。
いいぞぉ! 燃えろ燃えろ! 罪子なんて燃えちまえ! 社会のゴミ! 人間のクズ!
ーーやめてよぉぉぉぉぉ!!
「あ、あぁ、うわぁぁぁ!!」
クライは、燃え続ける体で膝から崩れて、魔剣すら落として泣き崩れた。
「ごめんなさい、パンを盗んでごめんなさい、服を盗んでごめんなさい、薄汚い格好で街を歩いてごめんなさい。だから、どうか燃やすのはやめてください……」
泣き崩れるクライの耳元で、怪物の誘惑の声が響いた。
「ネェ、ゼンブ、モヤソウヨ?」
「う、うぅぅ」
認めたくない、自分にこんな醜悪な心があるなんて認めたくない。誰か、誰か助けてぇ!!
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