第11話
新しいシステムが正式に導入され、いじめやSNS上の誹謗中傷に対処するための相談窓口が学校内で設置された。相談窓口は校内の一角に設けられ、普段は目立たないが、生徒たちが気軽に利用できるよう配慮されている。
窓口には専属のカウンセラーが常駐しており、生徒たちが自由に相談できる環境が整えられていた。その一方で、相談した内容が漏れる心配がないよう、プライバシー保護には最大限の配慮がなされていた。
運用開始から数日が経過したある日、最初の相談者が現れた。
中学1年生の木下は、ずっと一人で悩んでいた。クラスの一部の生徒たちがLINEのグループで彼女を侮辱し、陰口を叩いていることを知っていたが、それを誰にも言えずに苦しんでいた。自分が告発すれば、もっと酷い仕打ちを受けるのではないかという恐怖心があったからだ。
しかし、新しい相談窓口の存在を知った木下は、勇気を振り絞り、窓口を訪れることにした。
「こんにちは。何かお困りごとがありますか?」窓口で待っていたカウンセラーが、優しい笑顔で木下を迎えた。
木下は最初、言葉が詰まった。だが、カウンセラーの穏やかな声に背中を押され、少しずつ状況を話し始めた。「…あの、クラスのLINEグループで、私のことを悪く言っているんです。ずっと無視しようと思ってたんですけど、もう限界で…」
カウンセラーは木下の話をじっくり聞いた後、深く頷いた。「あなたがどれだけ辛かったか、話してくれてありがとう。これからは、学校がしっかり対応するので、安心してくださいね。まずは、そのLINEのやり取りの証拠を集めましょう。それをもとに、正式に調査を進めます。」
木下はホッとした表情を浮かべ、スマートフォンを取り出した。「これがそのスクリーンショットです…。」
カウンセラーは慎重に証拠を確認し、適切な処置を取るため、すぐに学校の調査チームに報告した。
その翌日、学校の調査チームが動き出した。カウンセラーと一緒に設置された調査委員会は、証拠として提出されたLINEのメッセージを徹底的に精査し、いじめに関与した生徒たちを特定した。
校長はその結果をもとに、関与した生徒たちを個別に呼び出し、厳重に注意した。「LINEでの誹謗中傷は学校の規律に反しています。これ以上続けるなら、厳しい処分を検討することになります。あなたたちの行動は他の生徒を深く傷つけていることを忘れないでください。」
いじめを行っていた生徒たちは、初めは反論しようとしたが、LINEのやり取りが証拠として揃っていたため、言い逃れできなかった。彼らは学校側の指導に従い、被害を受けた小林に謝罪することを約束した。
その後、学校内にはいじめや誹謗中傷に対するルールが掲示され、LINEやSNSでの問題行動は即座に報告され、厳格な対処が行われることが周知された。生徒たちは次第にこの新しいルールを意識するようになり、いじめや陰湿な行動は徐々に減少していった。
相談窓口の運用は順調に進み、次第に多くの生徒が自分の悩みや問題を相談しに来るようになった。窓口のカウンセラーは常に忙しかったが、それでも一人ひとりの生徒に丁寧に向き合い、必要なサポートを提供した。
遠藤と橋本も、この窓口の運用に対して積極的に協力していた。彼らは定期的に相談窓口の運営状況を確認し、学校のいじめ対策チームと連携を取ることで、いじめが根本的に解決されるよう努めていた。
学校内は少しずつ変わっていった。生徒たちは安心して学校生活を送ることができ、いじめに対する恐怖心が薄れ始めた。それは、遠藤と橋本が中心となって作り上げた、新しいシステムの成果だった。
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