第1話

新学期が始まり、学校の廊下は賑やかだった。橋本円花(はしもとまどか)は教室のドアを開け、新しいクラスメートたちの声に少し緊張しながらも、心の中で「大丈夫」と自分に言い聞かせていた。彼女の周りには、まだ馴染みのない顔ばかり。そんな中、一際目を引く存在がいた。


それが遠藤だった。明るい茶髪に清潔感のある制服を着こなし、クラスメートたちに笑顔で話しかけている姿は、橋本円花にとって眩しすぎるものだった。遠藤は学年の中で美人と評判で、自然と周囲が彼女に集まる。


授業中、遠藤は隣の席に座った橋本円花にちらりと目を向けた。「ねえ、橋本さん。あの授業の内容、どう思った?」その瞬間、橋本円花は心臓が跳ねるのを感じた。


「え?あ、うん、普通だと思った…」と答えるのがやっとだった。自分の声が震えているのが分かり、恥ずかしさで顔が熱くなった。


遠藤は「そうなんだ!私はちょっと難しかったな。でも、まあ何とかなるよね!」と明るく笑った。その笑顔に、橋本円花の心は少しだけ和らいだ。


放課後、橋本円花はいつものように一人で屋上へ向かった。そこには静かな空間があり、彼女にとっては心の安らぎの場所だった。しかし遠藤がついてきた。


「橋本さん、ここにいると落ち着く?」と遠藤が声をかける。驚いた橋本円花は一瞬言葉に詰まったが、遠藤の存在が心強く、思わず「ここが好き」と答えた。


その後、二人は自然と会話が弾んだ。趣味や好きな音楽の話、学校のことなど、少しずつお互いのことを知り始める。橋本円花は、遠藤の明るさに引っ張られるように、自分の心も開いていくのを感じた。


「橋本さんって、意外と面白いね」と遠藤が言った時、橋本円花は思わず笑った。これまで自分のことを面白いとは思ったことがなかったからだ。


この日、橋本円花と遠藤の友情の第一歩が始まった。二人の間にはまだ多くの不安や葛藤が待っているが、その瞬間だけは彼女たちの心が通じ合っていた。


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