第2話

橋本円花は、朝の教室に入ると、いつものように周囲の視線を感じた。友達がいないことは分かっていたが、こうして目に見える形で孤立していることを再確認するのは辛かった。彼女は自分の席に着くと、周りの声が途切れた気がした。


その日、彼女のカバンの中身がひっくり返っていた。教科書が散らばり、ペンが転がっている。誰かがいたずらをしたのだと、すぐに理解した。周りの生徒たちは笑っていたが、橋本円花は何も言えず、ただ無言でカバンを拾い上げた。


授業中、机に落書きをされていることに気付いた。何か悪口のような言葉が黒板消しで書かれていて、彼女はそれを見つけて心が沈んだ。あまりにも幼稚な行為だが、無視することもできない。


さらに、昼休みにはロッカーにゴミが詰め込まれていた。開けると、弁当の残りや使い古しのノートが目に入る。友達に囲まれているはずの彼女も、その瞬間だけはひどく孤独を感じた。


その様子を見ていた遠藤は、橋本円花がどれほど傷ついているかを理解し始めた。彼女の心の中に、何かを変えたいという思いが芽生え始めた。


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