第13話
カウンセリング体制の強化が進んだことで、学校は次のステップとして、いじめに対する新しい規律を導入し、その実効性を保つためのフォローアップ体制を整備することを決定した。これにより、いじめ行為を事前に防止し、発生した際には迅速かつ適切な対応を取るためのルールを明確にする必要があった。
遠藤と橋本は学校のいじめ対策委員会と協力し、新たな規律を定めるためのガイドラインを作成することになった。これまでの経験をもとに、彼らは以下の重要な要素を含む規律案を提出した。
1. 学校の新しい規律
いじめ行為の定義と厳格な処罰 いじめ行為には、肉体的・心理的暴力、誹謗中傷、陰湿な嫌がらせ、SNSやLINEを通じた中傷行為を含むと明確に定義される。これらの行為が発覚した場合、即座に学校側の調査対象となり、適切な処分が下される。処分には、警告、停学、最悪の場合は退学も含まれる。
SNSおよびLINE上での行為に対する監視体制 SNSやLINEを使用したいじめが確認された場合、そのスクリーンショットやメッセージの証拠を学校の相談窓口に提出することで調査が行われる。学校はこの証拠をもとに厳格な対応を行い、適切な処罰を課す。必要に応じて、警察や専門機関との連携も視野に入れる。
匿名通報制度の設立 生徒がいじめを目撃した場合、匿名で通報できる制度を設け、情報提供者のプライバシーを保護しつつ、迅速に問題を調査できるようにする。これにより、恐れや報復の心配なく、いじめ行為の情報が集まることが期待される。
2. フォローアップ体制
定期的なフォローアップセッション いじめ被害者やその周囲の生徒には、定期的にカウンセラーや教師によるフォローアップが行われる。相談の結果や進捗状況が確認され、問題が再発していないかどうかのチェックが継続的に行われる。
いじめ加害者に対する再教育プログラム いじめ加害者には、処分後も学校に残る場合、必ず再教育プログラムを受けることが義務づけられる。このプログラムでは、コミュニケーションスキルや感情のコントロール方法を学ぶとともに、いじめの悪影響について深く理解させる。
学校全体の意識向上プログラム 定期的に全校生徒を対象とした「いじめ防止講座」や「SNSリテラシー講座」を開催し、学校全体でいじめ問題に対する意識を高める。また、ポスターや資料を校内に掲示し、いじめ行為に対する罰則や学校の姿勢を生徒たちに周知徹底する。
提案書をまとめた後、遠藤と橋本は再び校長やいじめ対策委員会と話し合いの場を持った。彼らの提案は迅速に取り上げられ、校内で新しい規律が正式に施行されることになった。
数週間が経ち、学校全体に新しい規律が浸透し始めた。しかし、早くもいくつかの問題が発生した。ある生徒がLINE上でクラスメイトを中傷するメッセージを送ったことが匿名で報告され、証拠のスクリーンショットが学校に提出されたのだ。即座に調査が行われ、その生徒には厳重な注意と再教育プログラムへの参加が義務づけられた。
「これで終わりじゃない。もっと慎重に進めないと、まだ別の問題が出てくるかもしれない。」橋本はそう言いながらも、早速の成果に手応えを感じていた。
同時に、いじめ被害にあっていた生徒にはフォローアップのためのカウンセリングが定期的に提供された。カウンセラーが被害者に寄り添いながら、少しずつ心理的なケアを進めることで、その生徒は学校生活に安心感を取り戻していった。
新しい規律とフォローアップ体制の導入から数か月が経つ頃には、生徒たちの意識にも徐々に変化が見られ始めた。匿名通報制度や定期的なフォローアップにより、生徒たちはいじめが発生した際に自分が声を上げられる場所があるという安心感を持つようになった。
「いじめを見て見ぬふりするんじゃなくて、ちゃんと報告すれば何かが変わるんだってわかってきたみたいだな。」遠藤は校内の雰囲気の変化に気づき、感慨深げに話した。
また、加害者の再教育プログラムも徐々に効果を上げ始めていた。暴言や嫌がらせを行っていた生徒たちが、自分の行動の影響を理解し、再び同じ過ちを繰り返さないようになっていった。
今後の課題 規律や体制の導入は成功を見せつつあったが、まだ完全な解決には程遠かった。遠藤と橋本は、いじめ問題がなくならない限り、継続的な改善とフォローアップが必要だと痛感していた。
「これで終わりじゃない。規律ができたことで、今度は生徒一人ひとりがどう変わっていくかが鍵になる。」橋本は遠藤に言った。
「そうだな。これからも一歩ずつ前に進んでいくしかない。」遠藤は、さらに効果的な改善策を考えながら、次のステップに向けて準備を始めた。
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