第12話
相談窓口の運用が軌道に乗り始めると、学校側は新たな課題に直面した。いじめ問題が表面化し、多くの生徒が相談に訪れるようになる一方で、カウンセラーの対応能力に限界が見え始めたのだ。相談件数が急増し、カウンセラーは毎日多くの生徒の話を聞かなければならず、心理的・肉体的に疲弊していった。
そんな中、遠藤と橋本は学校側と協力し、カウンセリング体制をさらに強化するための新たな提案を考えることにした。
「今のままだと、カウンセラー1人に負担がかかりすぎている。もう少しサポートできる仕組みが必要だと思う。」遠藤は、相談窓口の現状について橋本に話しかけた。
「そうだな。生徒が安心して話せる場所があるのはいいけど、今の人数では対応しきれない。もっと多くのカウンセラーを増やすか、他にサポートできる方法を考えた方がいい。」橋本も同意した。
二人は校長に対して、カウンセラーの増員や体制の強化を含む提案書を作成することにした。提案内容は以下の通りだった。
1. カウンセラーの増員 現在、相談窓口には専属カウンセラーが1名のみで対応しているが、これは明らかに不十分である。そこで、外部から非常勤のカウンセラーを追加で雇用し、複数のカウンセラーがローテーションを組んで対応できる体制を整える。
2. 教職員の研修 教職員がいじめの兆候や生徒の心理的な問題に早期に気づけるように、全教職員に対して定期的なカウンセリング研修を実施する。これにより、カウンセリング体制の補完を行い、教室や部活動などの普段の生活の中でも、生徒をサポートできる環境を整える。
3. ピアカウンセリング制度 生徒同士が支え合う仕組みとして、ピアカウンセリング制度を導入する。信頼のおける生徒をピアカウンセラーとして育成し、他の生徒が気軽に相談できる仲間のネットワークを構築する。
4. オンライン相談窓口の設置 学校内の対面窓口だけでなく、SNSや学校の公式ウェブサイトを通じて匿名で相談できるオンライン窓口を設ける。これにより、直接相談するのが難しい生徒にも対応できる体制を整える。
提案書を手に、遠藤と橋本は校長室を訪れた。校長は二人の提案を真剣に受け止め、すぐに教育委員会やカウンセリング専門家と協議を始めることを約束した。
「確かに、今のままではカウンセラーが疲弊してしまいますね。増員とオンライン相談窓口の導入についてはすぐに検討しましょう。」校長は深く頷き、二人の提案に賛同した。
その後、学校ではすぐにカウンセラー増員が行われ、新たなカウンセラーが非常勤として雇用された。また、教職員へのカウンセリング研修も行われ、いじめや生徒の心の問題に対する意識が高まった。
一方で、ピアカウンセリング制度も開始され、学生ボランティアが選抜されてカウンセリングの基礎を学び、他の生徒の相談に乗るサポート役を担うようになった。
オンライン相談窓口も同時に開設され、これまで直接窓口に来ることができなかった生徒たちが、匿名でいじめや心の問題を相談できるようになった。これにより、相談件数はさらに増加したが、複数のカウンセラーとピアカウンセラーの協力体制によって、効率的に対応することが可能になった。
カウンセリング体制の強化が進むにつれて、学校全体の雰囲気も少しずつ変わっていった。生徒たちは自分たちが安心して相談できる環境が整っていることを知り、いじめや心の問題を抱えることなく、学校生活を送ることができるようになってきた。
「これで、少しは生徒たちが安心して学校に通えるようになったな。」橋本は遠藤に向かって言った。
「そうだな。でも、これで終わりじゃない。これからも改善し続けないと、問題はまた出てくるかもしれない。」遠藤も慎重な表情を浮かべながら答えた。
二人は学校が今後もカウンセリング体制を維持し、いじめを未然に防ぐために必要な取り組みを続けていく決意を新たにした。
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