第14話
新しい規律とフォローアップ体制が導入されてから数ヶ月が経ち、学校の雰囲気は徐々に改善されていった。いじめの報告件数は減少し、生徒たちの意識も変わりつつあった。しかし、遠藤と橋本は依然として警戒を怠らず、さらなる問題に直面することになった。
定期的なカウンセリングやフォローアップが行われる中で、一部の生徒たちはカウンセラーとの対話を通じて心のケアを受けていたが、全員がそのシステムを利用しているわけではなかった。また、匿名通報制度を通じていじめを報告する生徒は増えたものの、いじめ行為が完全に根絶されたわけではなかった。
ある日、遠藤はカウンセラーからの報告を受ける。最近、カウンセリングを受けた生徒たちの中に「フォローアップがあまり効果を感じられない」との声があることがわかった。これに対し、橋本も同様の懸念を抱いていた。
「いじめが減ったのは良いことだけど、根本的な問題が解決していないかもしれない。」橋本は心配そうに言った。
その頃、SNSやLINEでの誹謗中傷行為が依然として続いていることが明らかになった。匿名性が高いSNS上での悪口や中傷は、いじめのような陰湿な形で生徒たちを悩ませていた。遠藤と橋本は、この新たな問題に対処するために、学校内での意識改革を再度促進する必要があると感じた。
「カウンセリングや相談窓口だけでは不十分だ。もっと積極的に生徒たちを巻き込む方法を考えなければ。」遠藤は言った。
そこで二人は、全校生徒を対象にしたワークショップを開催することを提案した。このワークショップでは、いじめやSNSの使い方についての理解を深めるため、以下の内容を含めることにした。
ワークショップの内容
いじめのメカニズムやその影響についての説明
SNSでの行動がどのように他人に影響を与えるかを考えるグループディスカッション
具体的な事例を通じての役割演技(ロールプレイ)で、被害者と加害者の視点を体験する
安全なSNS利用に関するルール作りを参加者で行う
ワークショップの日、校内は緊張感が漂ったが、生徒たちは次第に話し合いや演技を通じて、自分たちの行動や言葉が他者に与える影響について真剣に考えるようになった。特に、役割演技を通じて加害者の立場になった生徒たちは、自分の言動がどれほど傷つけることができるのかを実感し、驚く姿が見られた。
「自分も言われたら嫌だなって思った。」ある生徒が発言すると、周囲からも同意の声が上がった。こうした反応は、今後の行動に変化をもたらす可能性を示唆していた。
ワークショップの成功を受け、遠藤と橋本は定期的にこのような活動を続けることを決定した。カウンセリングだけでなく、実際に生徒たちが自分の意見を表現し、仲間と共に問題を考える場を設けることで、いじめやSNSでの誹謗中傷に対する意識をより高めることができると信じていた。
しかし、その矢先に新たな問題が浮上する。ある生徒が、学校内でのトラブルに対処するための方法として、暴力行為に訴えかけるという事態が発生した。この生徒は、いじめの加害者に対して直接対決することを決意し、他の生徒を巻き込もうとしていたのだ。
「今度は暴力沙汰か……。」橋本はため息をつき、次の対応を考える必要があることを痛感した。
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