第10話

翌日、遠藤と橋本は校長室に呼ばれていた。彼らは一晩かけて準備した提案書を手に、少し緊張した面持ちで部屋に入る。窓から差し込む朝の光が、部屋の厳粛さをさらに強調していた。


「おはようございます。」橋本が少し小さな声で挨拶する。


「おはよう。さて、今日は君たちが何か提案を持ってきたと聞いているが…」校長先生は落ち着いた表情で二人に目を向けた。


遠藤が一歩前に進み、提案書を差し出す。「私たちは、いじめをなくすために新しいシステムを導入する提案を考えました。」


「システム?」校長は眉をひそめながら、遠藤から提案書を受け取った。


遠藤は自信を持って説明を始める。「はい。最近、SNSやLINEでのいじめが増えています。それは表立って見えないだけで、多くの生徒が被害に遭っているんです。このままでは解決が難しいと思い、学校全体でいじめ対策のシステムを作るべきだと考えました。」


橋本も遠藤に続き、静かながらも力強い声で話し始めた。「具体的には、LINEやSNSでのいじめに対して、学校が相談窓口を設けること。そして、いじめに関わる証拠を集めて、適切な対処をする仕組みを作ってほしいんです。」


校長は二人の説明を聞きながら、提案書に目を通す。「ふむ、LINEやSNSでの証拠を集める…これは、個人のプライバシーに関わる問題もあるが、それをどうカバーするつもりかね?」


遠藤は一瞬考え込みながらも、すぐに返答した。「確かに、プライバシーの問題もありますが、いじめの被害者が自ら証拠を提出する場合には、その意思を尊重し、適切に対応できる体制を整えることが大事です。提出された証拠は厳重に管理され、被害者のプライバシーが守られるように配慮します。」


校長はしばらく黙って考え込んでいたが、やがて静かに頷いた。「なるほど。確かに、いじめの現状を放置するわけにはいかない。SNSを使ったいじめは学校でも増加している問題だ。君たちの提案には大いに賛同する。」


二人はほっとした表情を浮かべた。


「だが、このシステムを実際に運用するには、もう少し具体的な計画が必要だな。まずは、相談窓口の設置と、カウンセリング体制の強化だ。君たちはどのように進めたいと思っている?」


遠藤はすぐに提案を進める。「まず、相談窓口を設けることで、生徒が安心していじめの報告をできるようにします。報告された内容は、専門のカウンセラーと協力して調査します。そして、LINEやSNSでのいじめが確認された場合、その証拠を基に、適切な処分が下されるべきです。」


「具体的には、名誉毀損や侮辱罪に該当する場合は、その行為が法的にどのような問題を引き起こすかを生徒たちに教育します。そして、いじめが続く場合は、学校として休学処分などの措置を取るべきです。」橋本も補足した。


校長は二人の言葉に真剣に耳を傾けていた。「分かった。では、まずは君たちの提案通り、相談窓口を設置し、いじめ対策の強化に乗り出すことにしよう。LINEやSNSでのいじめに対しても、報告があれば迅速に対応できる体制を作る。」


「ありがとうございます!」二人は同時に深々と頭を下げた。


「君たちの提案が実現すれば、この学校もより安全な場所になるだろう。これからは、いじめを許さないという強い姿勢で臨んでいくべきだ。それに君たちが先頭に立ってくれることを期待しているよ。」校長は笑みを浮かべ、二人に感謝の言葉を送った。


その後、学校は速やかに動き出した。掲示板にいじめやSNSでの誹謗中傷に対する新しいルールが張り出され、相談窓口が設置された。カウンセリング体制も強化され、常駐のカウンセラーが配置されることになった。


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