第9話

放課後の静かな図書室。窓の外には夕陽が差し込み、穏やかな空気が漂っていた。遠藤と橋本は、校内で数少ない落ち着けるこの場所で、肩を寄せ合うように座っていた。


遠藤が開いたノートパソコンのスクリーンには、「名誉毀損」「侮辱罪」といった単語が並ぶページが表示されている。


「こんなこと、本当にできるのかな…」橋本は眉間にしわを寄せて、画面を覗き込む。


「できるよ。いじめって、普通の嫌がらせだけじゃなくて、こういう法律にも引っかかるんだ。だから証拠さえあれば、訴えることだってできる。」遠藤はキーボードを打ちながら、冷静に答えた。その目は、画面の一文字一文字に集中している。


「でも、証拠ってどうやって集めるんだ? それに、LINEのやり取りとか、SNSの書き込みって証拠として認められるのかな…」橋本はまだ不安げだ。


遠藤は一度手を止め、少し笑った。「大丈夫、調べたらちゃんと出てきた。LINEのスクショやSNSの書き込みも、いじめの証拠として有効なんだって。実際に、これを元に裁判になった事例もある。」


「そうか…」橋本はホッとした表情を浮かべる。


遠藤はさらに調べを進める。「名誉毀損とか侮辱罪って、基本的に他人の評判を傷つける行為が対象なんだ。だから、相手を悪く言ったり、嘘を広めたりした場合、それが証拠として残っていれば、訴えることができる。しかも、こういったことは単なる校内問題じゃなくて、場合によっては刑事事件にもなるんだ。」


「刑事事件…それって本当にそんなに重いの?」橋本は驚いた表情を見せた。


「うん、場合によっては警察が介入することだってある。もちろん、そこまで大ごとにしたくない場合は、学校側に報告して対応してもらうこともできるけどね。」遠藤は冷静に説明する。


「じゃあ、このLINEのやり取りを証拠として出せばいいんだな…」橋本は自分のスマホを見つめ、そこでのいじめのやり取りを思い出す。


「そう。しかも、ただ報告するだけじゃなくて、学校に相談窓口を作ってもらったり、いじめに関するルールを強化してもらうように提案できるんだ。」遠藤の言葉に力がこもる。


橋本は深く息をつき、勇気を奮い立たせるようにうなずいた。「やってみるよ。遠藤が一緒に調べてくれて、本当に心強い。」


遠藤も微笑みながら頷く。「一緒にやろう。これで、みんなが少しでも安心して学校に来られるようになればいいんだ。」


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