第8話

時は1935年12月、IJTSを制定してから3年が経ち、三菱や中島といった大手の航空機メーカーがIJTSのランク4認定をようやく受け、その他のメーカーもランク3認定を受け始めたころ、戦略共同航空局では中島で開発されていた「光」エンジンの開発中止を命じ、中島には軍がライセンスを購入したアメリカのR-1820を光四型として生産するように命じた。そしてこのエンジンは九六式艦戦や九六式陸攻の改良型用のエンジンとして採用された。その後三菱、中島は1636年5月にIJTSランク5を川崎、愛知航空機は同年6月に立川と川西および九州飛行機は8月にランク5をうけ国内の主要な航空機メーカーはレベル5を中小企業であっても最低でもレベル4認定を受けている状態となった。

そして一部メーカーがIJTSのレベル審査の際に審査員に賄賂を渡すという不正が発生したが直ちにその審査員は審査員資格をはく奪され賄賂を渡したメーカーは無期限のIJTSレベル審査会への審査届の提出禁止が言い渡された。


そして時は1937年、ついに正式に九六艦戦の後継機の要求性能が公開された。

仮称十二試艦上戦闘機

・速度:4,000mで300kt以上であること。

・航続距離:新開発の増槽込みで2,500kmを確保すること。

・武装:12.7mm機銃4挺または20mm機銃2挺と12.7mm機銃2挺

・爆走:60㎏爆弾を4発搭載できるようにすること

・防弾装備:12.7mm機銃を防ぐことのできる装備

・生産が極めて簡略化されていること、すぐに部品の取り換えができること

となった。なぜ史実より要求性能の数が少なかったり、格闘戦の要項がなくなっているのかというと、要求性能を過大にすると将来の発展性に影響を及ぼす可能性があること、格闘戦に関しては諸外国の航空機が軒並み高速化しているため低速の格闘戦機を運用していては戦えないとの意見が軍内部で無視できないレベルまで大きくなっていたからである。


一方陸軍は新型中戦車の開発に難航していた。理由はソ連に展開しているスパイからの情報で現在計画しているスペックでは歯が立たない可能性が出てきたためである。

(この時期になると教育改革の甲斐あって敵戦力の過小評価は兵力の分散および随時投入並みに行ってはいけないと陸海軍の中で認識されていた。さらに情報に関しても同時に重要とされ諜報機関の予算増加や暗号の解読機器の開発、解読されない暗号の開発なども加速された。これに伴い我が国初のコンピューターが開発された。)

その結果なぜか私が陸軍に呼ばれたのだ。理由はおそらく陸軍内の機械化を押し進めるように助言したからであろう。

「これはわざわざ申し訳ない」


「私は構いませんがよろしいのですか?海軍の人間を戦車開発に関わらせて」


「これに関しては問題ないよ。そもそも陸軍の機械化を進めるように言ったのは君だし、運用していた戦車の問題点とその解決策を提示したのも君だから問題ないという判断になったのであろう。詳しいことは私にもわからないよ。」


「現在どこまで開発は進んでいますか?」


「一応搭載するエンジンと主砲は決まっているよ。エンジンは戦略共同研究所で開発された新型のV型12気筒空冷ディーゼルエンジンを搭載する予定だよ、主砲に関しては47mm砲の予定だったんだが長砲身の57mm砲に変わったよ。」


「なるほど、問題はなさそうですけど何が問題なんですか?」


「装甲だよ。我々が想定している装甲の厚さと実際に必要な装甲の厚さの差が大きすぎて困っているんだよ。」


「なるほど、ではこうしましょう。まず新型のディーゼルエンジンですがこれの性能強化版を搭載しましょう。たしか海軍の新型建設機械に搭載するために戦車用のものをもとに出力強化版の開発が行われているはずです。無理であればトラック用のものを2基搭載しましょう。車体は走破性を上げるために幅広の履帯を履かせ、生産性に考慮して直線で構成しましょう、こうすることで様々な派生型を制作できます。砲塔は車体幅いっぱいまたは車体幅の8割程度にすることで装填手が装填を行いやすくなり、さらに車内が広くなるので居住性も向上します。」


「しかし砲塔を大きくすると被弾しやすくなってしまうぞ?」


「それに関しては心配無用です。車体及び砲塔は傾斜をつけて実質装甲圧を増加させますし、エンジンを強化するので速度低下の心配もありません。」


「なるほど、これで大丈夫だな。」


「ええ、おそらく。でもこれはあくまで私が考えた場合です。もしかしたらこれより良い案が出るかもしれませんよ。」


「だとしてもこれはいい案だ。この案を提案してみるよ。わざわざ申し訳ないね。」


「いえ、これがよい意見になればと思って提案したまでです。」


その後新型戦車に関してだが私の案がほぼそのまま採用された。どうやらエンジンに関しては計算の結果当初の予定通りになるようだ。

ここで戦略研究所が開発したディーゼルエンジンに関して説明しよう。このエンジンは先ほどから述べている通り戦略研究所が開発したディーゼルエンジンで大きく分けて自動車用・戦車用・漁船などの小型船舶用の計3つに分けられるが船舶用に関しては全くの別物のためここでは割愛する。

開発はまず自動車用から始まった。自動車用から始まったのは戦車などと比べて比較的低馬力でよいことまたディーゼルエンジンの開発の練習台としてはちょうどよかったこと、陸海軍で機械化がすすめられそれに伴って自動車学校が設立されたために自動車、特にトラックの需要が大幅に増加したためである。そして始まったエンジン開発だが早速難題にぶち当たる、それは燃料噴射装置の問題である。燃料がうまく燃焼室に噴射されずに試作機の故障が頻発した。最終的にこの問題は私が前世で自動車メーカーでエンジニアをしていた時の知識を使って解決したが、この問題が原因で予定より3か月ほど完成が遅れた。このエンジン開発で開発された燃料噴射装置は改良され、戦車用にとどまらず、様々な航空機エンジンにも搭載された。

そうして完成したトラック用のディーゼルエンジンは一型一般ディーゼルエンジンとして正式化され様々なトラックなどに搭載された。続いて戦車用のエンジン開発がスタートした。トラック用とは違いV型の8気筒および12気筒が開発される。こちらはトラック用のものを改良し使用することができたため予定通りに開発が進み一型特殊ディーゼルエンジンとして制式化され各メーカーでトラック用のものと同様に大量生産が始まった。

IJTS制定により国内の輸送量がひっ迫したためSLなどを大量に生産しなくてならない状況に陥ったが重工業に関する機器ははっきり言って旧式のものばかりで良質な鉄鋼などはもっぱら輸入に頼っていた。そこでその状況を改善すべく重工業に関する最新の機器や技術をドイツより輸入し、さらに諸外国から鉄鉱石を輸入すべく交渉に入った。同時にスウェーデンのボフォース社と40mm機関砲のライセンス生産の交渉に入り新型の対空機関砲として制式採用する予定だ。20mm機関砲および30mm機関砲に関しては史実とは違いM2ブローニングをベースにそれぞれ20mm,30mmにスケールアップすることで対応した。



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あとがき

皆さんへの質問です。IJTSレベル審査不正の罰は重過ぎるでしょうか?皆さんの意見をお願いします。またこの作品の評価もお願いします!!!

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