第7話

時は1935年8月、私は海軍中佐に昇格した。このころになると陸海軍が共同で設立した戦略研究所が油圧式カタパルトの試作機を完成させたとの連絡が私のところにきた。茨城県にある研究所に私は向かった。この世界では史実とは違い失業者の低減や軍の機械化を急速に押し進めるべく軍が自動車学校の設立や自動車、道路の舗装などといったもののほか鉄道網も強化したため全国に自動車や鉄道が走っている。自動車は一台当たりのコストが問題だったが軍が大量に発注しさらに古くなったものを民間に放出したため一台当たりの価格が下がり非常に手に入れやすくなったため道路交通網が当初の予定より急速そして迅速に発達した。


「おおこれはこれはわざわざありがとうございます。」


「おだてはいい、早くできたという試作機を見せてくれ。」


「かしこまりました。こちらへ。」


「ほう、これが新型のカタパルトか。ところで主任、性能はどうなんだ?」


「これは最大3tの航空機を時速130kmまで加速させることが可能です。現在開発中の改良型では最大で4tのものを時速130kmまで加速させることができるようになる予定です。」


「それと中佐の意見で開発を開始した蒸気式カタパルトですが現在試作1号機が完成間近ですのでおそらく1ヶ月後の10月にはお見せできると思います。」


「わかった、そのときまた伺わせてもらう。ところで電波を利用して敵の位置を発見する電探とその逆探知装置、そして敵味方を識別する装置はどうなっている?」


「電探に関しては完成していますが、信頼性および性能が低いのと、衝撃に弱いです。ですので信頼性、性能そして耐衝撃性を向上させたものを開発中です。」


「その完成したものの性能はどうだったのだ?」


「航空機であれば25浬程度の距離で発見でき艦船であれば10浬程度でした。低空にいる航空機や海上にいる艦船では、海面に反射する電波が原因でそこまで探知距離が伸びませんでしたが、航空機用であれば有用であるといえます。」


「わかった。今度上層部に掛け合って電探に関する予算を増やすように言っておくよ。」


「ありがとうございます。それと中佐が主導して整備したIJTSのおかげで真空管やマグネトロンが従来のものより高性能になりそれらが原因の故障が激減しました。重ねてお礼を申し上げます。」


「よしてくれ私はあくまで提案しただけにすぎんよ、本当にすごいのはそれを整備することで日本に多大な経済効果をもたらすと考えた上層部のおかげだ。」


こうして私の戦略研究所視察は終わった。



そして陸海軍による第3回の共同会議が1935年9月に行われその会議で以下のことが決められた

・電子機器に使用する真空管やマグネトロンの性能向上及び後継品の開発促進のために電子機器関連予算を大幅に増強。

・航空機や艦船を視認可能距離よりも遠距離から発見可能な電探の艦船搭載型および航空機搭載型の開発のために予算を増強。

・第1次開発が終了した油圧式カタパルトの海上試験を開始。空母「蒼龍」に搭載し試験を行い結果を見て正式採用するかを決定する。

・油圧式カタパルトよりも出力の大きい蒸気式カタパルトの開発を促進するために予算を増強。

・航空機搭載型ロケットの開発

などである。さらに高速貨物鉄道路線の整備や造船施設の大型化など様々な取り決めが行われた。航空機に搭載する火器に関しては陸海軍で予算を出し合ってアメリカのブローニングM2機関銃のライセンスと自由改造権を購入し「ホ102」として採用した。さらにこのころになるとアメリカから法外な値段(水雷挺1隻分)を提示されてでも購入した石油精製の技術研究が実を結び、すでに実用化されていた92オクタンガソリンよりも性能が高い100オクタンガソリンの精製に成功し大量生産体制に入ったため、従来までの87オクタンガソリンは地上車両用として民間などに格安で販売され自動車のさらなる性能向上に貢献した。(従来までなら地上車両用のガソリンは航空機用ガソリンに比べるとわずかに質で劣っていたためエンジン馬力がそこまででなかった。)そしてこの出来事より後に開発・改良がされた航空機用エンジンはすべて量産効果による若干のオクタン価の低下を見越して96オクタン以上のガソリンの使用が前提として設計・開発が行われた。主なエンジンとしては三菱の「金星」「瑞星」中島の「栄」「嵐」である。これらのエンジンはIJTS制定の効果や石油精製能力向上の影響を真っ向から受けたため、私が知っている史実のそれより生産性や整備性、馬力などが大きく向上している。

歩兵装備にも手が入り、小銃や機関銃の弾薬を開発に成功した7.7×58mmのリムレス実包に更新することとなった。こうして小銃は三八式歩兵銃から新型の九七式歩兵銃および九七式機関銃に更新された。しかしながら九七式歩兵銃はボルトアクション式のため連射力に難があるとし、新型の半自動小銃の開発が完了次第狙撃用に変更されることとなった。

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