第18話
1941年8月時点での日英関係および日米関係は史実よりは悪化していなかった。理由は陸海軍の穏健派が日独伊三国同盟の締結阻止や日本国中立宣言(この宣言により日本は戦争に介入していない)を行ったからであろう。またこれは最近知ったことだが陸軍内にも私と似たような転生者がいるらしく陸軍穏健派の事実上のトップを務めているらしい。そしてその転生者と面会することができた。
「本日はよろしくお願いします。西沢陸軍大佐」
「こちらこそよろしくお願いします。岩井海軍少将」
「本日の面会の目的ですが...」
「わかっていますとも今後我が国がどのように行動するかですよね?」
「そうです。でしたら話は早い。今のところの私の考えですが、日米関係はそこまで悪化していないため日米開戦の可能性は極めて低いでしょう。また中国戦線に関しても遼東半島および香港からは完全に撤収できたので今後は戦線を縮小し戦線を必要最低限にします。そして2.26事件や5.15事件で軍部が政権を持っているも同然なのでこれを何とかすると同時に軍部大臣現役武官制を廃止させるのが今の私の目標です。」
「なるほど、軍事政権と軍部大臣現役武官制の廃止は政治工作などをする必要があり難航しますがおそらく可能でしょう。」
「ところで話は変わりますが我々陸軍穏健派はある人物の当派閥への勧誘を開始しました。」
「誰なんです?」
「石原莞爾です。」
「石原莞爾ですか。しかし彼は満州事変の責任をとり現在は予備役では?」
「そうです。ですが彼の能力は非常に高い、さらに影響力もまだそこまで衰えていません。なので彼の思惑が分からないのが不安ですが引き込めばかなりの力になります。」
「そうですか、わかりました。では陸軍内のごたごたは西沢大佐にお任せします。海軍内は私にお任せください。そして現在レシプロエンジンの後継として現在戦略共同研究所にターボファンエンジンおよびそれをベースとしたターボプロップエンジンの開発を行ってもらっています。エンジンに関する情報は陸海軍で共同設立した諜報機関である〚
「なるほど、わかりました。私事ですが実は私は転生前IHIでエンジンに関する仕事していたので後で研究所に私の記憶に残っているエンジンの設計図と対艦誘導弾用に日本初のジェットエンジンであるネ20の弱点を克服させ簡素化したものの設計図を送っておきます。」
「それはほんとですか⁈ありがとございます。西沢大佐」
「いえいえ構いませんよ、岩井少将。また機会がありましたらその時に」
「ええ、ではまた」
こうして転生者同士の会談は終わった。
その後陸軍より石原莞爾が予備役より復帰したことが通達された。しかし階級は予備役編入時の少将ではなく大佐となった。またジェットエンジンについても西沢大佐が戦略共同研究所にジェットエンジンの設計図や構造図を送ったため開発が加速された。(ターボファンエンジンはXF5-1エンジンをデチューンし、ターボプロップはXF5-1をベースに開発するようだ。対艦誘導弾用にはネ20をベースにターボファンエンジン化したものを開発するらしい。)
そしてこの会談から約一年後の1942年4月、日本は中国からの完全撤退に成功した。その1か月後の5月には中華民国、中華人民共和国との講和交渉を無事終え、交渉から3か月後の8月にはイギリスと日英同盟および日英安全保障条約を締結した。こうした出来事から2か月が経過した1942年10月、新たな内閣が誕生した。この内閣は大日本帝国憲法の改正や軍部が政権を握ったことにより制定された法律の廃止や改定などを真っ先に行った。
内閣総理大臣:近衛文麿(このえ ふみまろ)
総務大臣:吉田茂(よしだ しげる)
外務大臣:幣原喜重郎(しではら きじゅうろう)
法務省:岩村通世(いわむら みちよ)
大蔵大臣:小倉正恒(おぐら まさつね)
文部科学大臣:橋田邦彦(はしだ くにひこ)
厚生労働大臣:田辺治通(たなべ はるみち)
農林水産大臣:井野碩哉(いの ひろや)
国土交通大臣:村田省蔵(むらた しょうぞう)
環境大臣:安井英二(やすい えいじ)
国防大臣:平沼騏一郎(ひらぬま きいちろう)
海軍総長:米内光政(よない みつまさ)
陸軍総長:東條英機(とうじょう ひでき)
近衛内閣は組閣後ただちに軍部制度の改革を陸海軍の穏健派とともに実施した。これにより1942年11月には無事軍部大臣現役武官制の廃止に成功した。こうして日本は
同年12月にはのちに史上最大の戦艦と呼ばれる戦艦が就役した。その戦艦は全長265mの巨体に46cm3連装砲を3基搭載しており、対空兵装に関しては九五式105mm連装両用砲を10基、同単装砲を6基搭載した上に九九式40mm4連装機関砲を20基、同連装砲を10基搭載、その他機銃を大量に装備した防空ハリネズミ戦艦であった。一番艦は「大和」と命名され4隻が建造予定であったが最終的に一番艦「大和」二番艦「武蔵」が建造された。本来であればそれで終わるはずだったのだが1945年に戦局の急変に伴い建造中止となりドックで解体途中だった三番艦と四番艦の建造が認められ、1947年に三番艦「信濃」が1948年に四番艦「常盤」が就役した。しかしこの三番艦と四番艦は一番艦「大和」や二番艦「武蔵」での反省を活かし、改設計が行われているため改「大和」型戦艦と呼称されることもある。
「大和」型戦艦に搭載する対空レーダーとしては新型の一式対空レーダー[OPS-1]が上げられる。このレーダーは世界初の3次元レーダーで見た目は戦後に開発された[OPS-12]に酷似している。しかし構造が複雑で高コストでなため「大和」型戦艦にのみ搭載された。
しかしながら翌年にはこれを小型し整備性を向上させた02式対空レーダー[OPS-2]が開発された。
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あとがき
海軍穏健派(事実上の)リーダー 岩井翔(主人公)
陸軍穏健派リーダー 西沢武雄
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