第9話 魔族との戦い


 俺たち三人の目の前には、男性らしき魔族が立っていた。直感が言っている。目の前にいる魔族と俺たちではレベルが違う。


 体中からヒア汗が出てきて、息の飲むのすら一苦労するほど。すると、俺たちを見て手を軽く叩き始めた。


「すごいですね。エルフ国王女にラークネル公爵のご子息、ルーリア公爵のご令嬢。あなたたちがいればどんなことでも出来そうですよ」

「……」


 魔族の言葉に対し、俺たちは動くことが出来なかった。


「さっきの王子はルーリア公爵のご令嬢を捨ててでも逃げようとしていましたが、私にとってはあなた方の内一人が捕まってくれればいいです。なので相談していいですよ」


 魔族は不気味な笑みを浮かべながら、土魔法で椅子を作り、座ってこちらを見てくる。


 俺が二人の方を向くと、体中が震えており、顔がこわばっていた。


(この中じゃ俺しかいない)


 覚悟を決めて魔族に言う。


「お、俺が……」


 言葉を発している途中で、アリスとエミが肩に手を置いて止める。


「ダイラルが犠牲になる必要はない」

「そうだよ」


 その言葉を聞いた魔族は、手を叩いて笑った。


「私たちにはない【見方を庇う】ってやつですか」

「そんなのどうでもいいでしょ」

「まあそうですね。では力づくでいかせていただきますよ」


 そういって、一瞬にして俺の目の前にきて、攻撃を仕掛けてくる。すると、何が起こったのかわからずに、吹き飛ばされた。


「くぁ……」


 口に手を当てると、とてつもない量の血が出ていた。


「魔族以外は脆いものですよね。下限をしてもこれなのですから」


 そして、魔族がアリスとエミに攻撃を仕掛けようとした。


「ま、待て……」


 俺の言葉で魔族の行動が止まる。


「俺が、俺が人質になる。だから二人には手を出すな」

「そ、そうですか」


 二人が何かを言っているが、耳に入ってこない。


「まぁ、人質になるのなら気絶はしてもらいますよ」


 俺の腹部にこぶしを当ててきて、気を失っていった。



(ここはどこだ?)


 あたり一帯が白い場所であった。すると、靄のかかった男性が話しかけてきた。


「お前は本当にいいのか?」

「何が?」

「だから、魔族に捕まることだ」

「でも、しょうがないだろ」


 首を横に振ってくる。


「もっと考えろ。お前には力があるだろ」

「あいつに勝てるだけの力が?」

「あぁ。考えろ」

「何なんだよ」

「剣と魔法。それがお前の……」


 俺の意識が徐々に遠のいていき、目を覚ました。


 すると、アリスとエミが泣きながら魔族のことをにらみつけていた。


(あれ、痛くない……)


 俺はすぐさま剣を抜いて、魔族に攻撃を仕掛ける。すると、一歩後方へ移動して避けられる。


「あれ、気絶していましたよね?」

「あぁ。それと、気が変わった」


 俺は初級魔法を駆使しながら魔族と交戦を開始した。だが、思っていた通り、魔族は魔法に対しては気にもせずに俺の攻撃をかわしていった。


「そろそろ諦めてくれません? あなたたちだって実力差ぐらいわかっていますよね?」

「あぁ。でも、俺は三人で帰らなければいけないんだ‼」


 俺は一瞬アリスの方を向くと、なぜか糸をわかってくれたかのように炎玉かえんだんを魔族へ放った。


 魔族は難なくかわしてしまったが、魔法の背後から魔族に攻撃を仕掛けて、腕に切り傷を与えた。


「へ~。やりますね」


 その瞬間、魔族から多大なオーラを感じる。


(さっきまでのが本気じゃなかったのかよ)


 俺の目の前にやってくる魔族に対して、アリスとエミが攻撃魔法で援護をしてくれるおかげで防戦一方を繰り広げる。


「もういいです」


 魔族は魔法を圧縮した球を作り、こちらへ放とうとしてきた。それを阻止するために、俺が攻撃を仕掛けようとする。それと同時にアリスが炎玉かえんだんを放った。


 その時、俺の剣と炎玉かえんだんが交わった。


(何が起こっているんだ?)


 銀色の剣が、赤色に変色した。そして、魔族が放った球を切り裂いた。すると、先ほどまでの余裕がなくなり、魔族は睨みつける形でこちらを見ていた。


「何をした?」

「……」


 すると、ぶつぶつと何かを言い始めた。そして、俺に指をさして言った。


「面白い。お前は俺がつぶす。だからいいことを教えてやろう」

「な、なんだ?」

「そろそろお前たちが住んでいる国が危険になるぞ。そこで死ぬなよ」


 魔族はニヤッと笑いながら、この場を後にした。すると、ドッと疲れがやってきて、視界が暗くなっていった。

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