第10話 対話


 目を開けると知らない天井をしていた。


 俺は左右を見渡すと、アリスとエミが近くの椅子に座って眠っているのを確認する。


(本当に迷惑をかけているな……)


 ミノタウロス戦の後も気を失って、アリスに助けてもらった。今回に関しては、エルフ国の王宮だと思うことから、エミが貸してくれたんだろう。


(本当にありがとう)


 俺は別途から立ち上がろうとした時、足に力が入らず床に転がってしまう。すると、アリスとエミが起きてしまった。


(やべ……)


 そう思った瞬間、アリスが俺の胸元に抱き着いてくる。


「よかった。本当によかったぁ……」

「心配させてごめん」

「ううん」


 俺たちの光景を見ていたエミが、少しだけ変な表情をする。


「ダイラルさん、ご無事でよかったです」

「いえ、こちらこそ助けていただいてありがとうございます」

「それで、一つ質問なのですがお二人はお付き合いしているのですか?」

「「‼」」


 アリスと目を一瞬だけ目を合わせて、すぐにそっぽを向く。


「まあ、アリスさんのご事情もありますから他言はしませんが、イチャイチャするならお二人きりの時にお願いします」

「「付き合っていません‼」」

「あら、そうなんですか? じゃあ、今度お話があります」


 その言葉を聞いたアリスは、怪訝そうな表情を浮かべてエミの事を見た。


(な、なんなんだこの空気は……)


 俺は咳ばらいをしてアリスとエミに質問をする。


「俺が気絶した後、どうやってここまで帰ってきたのですか?」

「これを使ったのです」


 エミはポケットの中から結晶を取り出して、見せてくる。


「これは?」

「転移結晶です」

「え!?」


 転移結晶とは、最終版ぐらいで数個のみ入手ができる貴重なアイテム。


「流石にこれがどれだけ貴重なものか知っているのですね」

「はい」

「気にしないでください。私は使ったことに後悔はしていませんよ。あの時、使うのに適していると思っていますから」

「……」


 俺が気絶さえしていなければ転移結晶を使うことはなかった。そう思うと、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。


「そんなに後悔するなら、ダイラルさん。一つお願いをしてもいいですか?」

「何ですか?」

「それは魔族が言っていたことが終わったら伝えます」

「わ、わかりました。俺のできる範囲でお願いしますね」

「大丈夫です。絶対にできることですので」


 エミは、ニコニコと笑いながら先ほど座っていた椅子に戻った。


(何だろう?)


 さすがに無茶なお願いはしてこないだろうけど、できれば簡単なことで頼む。


「それよりも、早くアリバルン国に戻らなくちゃ」

「そうだね」


 アリスが頷くと、エミが淡々と話し始める。


「こちらから情報は伝えておきましたので、私たちも早めに行きましょう」

「ありがとう」


(王族でもライドとは大違いだな)


「ダイラルさんの怪我は治しておりますが、力が戻るまで一日ほどかかると思いますので、明後日にはここを出ましょう」


 俺とアリスはエミの言葉に頷いた。そして、エミがこの部屋から出ていくと、少し顔を赤くしながら、アリスが俺のもとへ近寄ってくる。


「ダイラル」

「ん?」


 俺が首をかしげながらアリスの方を見ると、顔が真っ赤であった。


「わ、私もこの一件が終わったら話があるから‼」

「お、おう」


 アリスはなぜかこの部屋を駆け足で出て行ってしまった。


(何だったんだ?)


 でもあの顔、可愛かったな。さっきの光景を思い出すと笑みが出る。


(早くライド王子とは別のいい人が見つかってほしいな)


 そう思いながら就寝をした。



「やっぱり、ダイラルさんは私の……」


 エミは大樹を見ながらつぶやいていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る