第13話 戦闘2


(やっぱり居たか……)


 うすうす気づいていたが、今回の元凶は魔族だ。


(だけど、なんでここを狙ったんだ?)


 そう考えていると、魔族が斧をこちらに突き付けてくる。


「少しは骨がありそうなやつが来たんだ、楽しませてくれよ」


 俺が瞬きをした瞬間、魔族はこちらに向かってきていた。


(あいつより遅い)


 魔族の攻撃を難なく避けて、背中を切り付けて傷を負わせる。はっきり言って、数日前にあいつと戦わなかったら避けることも難しかっただろう。


 すると、先ほどまで遊びだったかのように、こちらに殺気をむき出しにしてくる。俺も深呼吸を挟み、覚悟を決める。


 そこから、魔族と俺の攻防戦が始まった。


 まず、魔族が左にフェイントを入れつつ右から攻撃を仕掛けてくる。それを避け、俺は突く形で魔族に攻撃を仕掛ける。


 だが、案の定それを避けられてしまい、数回のフェイントを絡ませつつ攻撃を仕掛けてくる。


(ちょっときついな)


 一回のフェイントなら別に苦ではないが、数回も入れられてしまうと惑わされてしまう。


 そう思いながら、この場にいる人たちが逃げれる時間を稼ぎつつ攻防戦が繰り広げられていった。そして、数分が立った頃、やっと周りに人がいなくなった。


「なあ、一つ聞いてもいいか?」

「??」

「なんでお前はこっちにつかないんだ?」

「は?」


 魔族の言っている意味が分からなかった。


「お前はこっちサイドの人間だろ?」

「言っている意味が分からない」


 俺の言葉に魔族はハッとした表情をする。


「あ~、まだ気づいていないんだな」

「……」


(気づくってなんだよ)


「まあいいや、俺は強い奴は歓迎だ。仲間になれよ」

「いやだ」


 俺の回答に対し、魔族はため息をつく。


「じゃあ死ね」


 魔族は全力の一撃を振りかざしてくる。その時、直感が悟る。


(これを受けたら死ぬ)


 だが、避けたところで衝撃で身動きが厳しくなり、死ぬのは目に見えている。


 その時、背後から魔法が飛んでくる。俺はそれと同時に後方に下がって避ける。


「バ、バルドさん」

「君を殺すわけにはいかない。俺が戦おう」


 そういった瞬間、遅れてアリスとエミがこちらへ近寄ってきた。すると、魔族は分が悪いと見たのか、この場から去ろうとする。


「待て‼」


 俺は火玉ファイアーボールを放つが、いともたやすく避けられる。だが、それと同時にアリスとバルドさんが炎玉かえんだんを放ち、足止めをする。


 すると、何かぶつぶつとつぶやき始める。


「俺の腕を食え」


 魔族の言葉とともに、片腕がなくなり、目の前に巨大なモンスターが現れた。


「お前たちは絶対に殺す。覚えたからな」


 そういって、この場から消え去っていった。


 そして、目の前に取り残されたモンスターが咆哮を放ってきて、全員が瓦礫にぶつかる。


(なんなんだ……)


 さっきまでいた魔族よりも威力だけなら高いかもしれない。そう考えていると、バルドさんが言った。


「まずはこいつを倒そう」

「はい」


 そういった瞬間、俺の腕に激痛が走った。そして、なぜかモンスターの力が剣に吸い寄せられていった。


(今だ)


 激痛が走りながらも、モンスターを切り裂いて、倒した。


 この時の俺は、真の力がどのようなものなのか理解していなかった。

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