第14話 魔族戦


(何なんだこの力は……)


 呆然としている俺のもとにアリスとエミが近寄ってくる。


「ダイラル、あれは……」

「俺にもわからない」


 俺にすら、先ほど起きたことが理解できていなかった。


「それよりも、体は大丈夫?」

「あ、あぁ」


 痛みは感じているが、戦えないほどではない。


「あいつを探しに行こう」

「でも」

「俺たちがやらなかったら、いずれ全滅する」


 現状、最前線で戦える存在は数少ない。それに加えて魔族がいると知っている人物はどれぐらいいるのだろう。なら、俺たちがない。


「でも、私たちで勝てるの?」

「……」


 アリスの言う通り、俺たちが勝てる相手ではないかもしれない。


 俺たち三人が無言の状態になっていると、バルドさんが言う。


「まずは王宮に行くのはどうかな?」

「え?」

「王宮に行けば、最新の情報を入手することが出来る。私がいれば聞くこともできるだろう」


 俺たちはバルドさんの方向を向きながら頷き、王宮へと戻ることにした。



 王宮の入り口にたどり着くと、兵士たちが続々と走り去っていった。


(王宮でもパニック状態に陥っているな)


 俺たちは王宮の中に入り、先へ進んでいくと、ライド様の部屋の前を通る。その時、胸から痛みを感じた。


(何だ?)


 部屋の前で立ち止まると、アリスたちがこちらを見てくる。


「どうしたの?」

「ダイラルくん、国王が待っているから」

「は、はい」


 痛みがありながらも、みんなの元へ行こうとすると、部屋の中から声が聞こえた。


「本当にこれで俺の地位は確立するのか?」

「あぁ。俺と契約をしたんだから、嘘はねぇ」

「だが……」


(誰と話しているんだ?)


 徐々に扉の前に近寄っていく。すると、衝撃的な言葉が聞こえてくる。


「魔族と契約に嘘はない。だから大丈夫だ」

「な、ならいいけど」

「それで、この国の人は殺してもいいんだよな?」

「全滅はダメだ。だが二割ぐらいならいい……」


(こいつ……)


 信じられなかった。名ばかりでも王子だ。そんな奴が国民を捨ててでも自身の地位のために魔族と契約をしたのだから。


 俺はバルドさんたちの方を一瞬見てから、剣を抜いて目の前にある扉を切り裂く。


 すると、目の前にはライドと先ほどいた魔族が立っていた。


「ダ、ダイラル……」


 その言葉とともに、魔族はこちらをにらみつけてきた。そして、アリスたちが俺のもとに駆け寄ってくると、驚いた表情をしてライドたちのことを見ていた。


「な、何をしているの!?」

「あ、あはは……」


 ライドは壊れたかのように天井を見ながら笑い出した。


「もういい。こいつら殺していいよ」

「そうか」


 すると、魔族はバルドさんの目の前に移動して殴りつける。


 俺はとっさに魔族に攻撃を仕掛け、足元から血が流れ始める。


「やっぱり、お前は殺しておく存在だ」

「それは俺のセリフだ‼」


 そこから俺と魔族の攻防が一分ほど繰り広げられると、部屋の周りに兵士たちが一斉にやってくる。それに加えて、国王と王妃もやってきた。


「ライド、お前何をしている……」

「と、父さん……」


 目の前の状況を理解した魔族はため息をつきながらライドの方を向いた。


「もう無理だな」


 魔族はライドに向かって魔法を唱えた。すると、ライドと魔族が融合し、魔人化していった。



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