第8話 見捨てられる存在


(やばい‼)


 バラバラに散らばる形でイーグラーの攻撃を避けると、イーグラーが上空へ飛び始めた。


 俺とアリスが合流したところで、エミがイーグラーへ風切エア・カッターを放った。


 その攻撃に対し、イーグラーは左右へ動くことによって避けた。だが、それをわかっていたかのように小竜エア・ウィンドを放ち、直撃する。


(今だ)


 この瞬間を逃さないように、剣を引き抜いてイーグラーとの距離を詰める。


 すると、矛先が俺に変わり、剣と爪がぶつかりあう。


(なんて重さ……)


 このままでは力負けしてしまうと思い、体を捻らせる形で受け流す。その瞬間、アリスが炎玉かえんだんを放ち、イーグラーの右羽が負傷する。


(これなら、もう飛べないはず)


 そう思った時、イーグラーが突進してくる形でアリスに攻撃を仕掛けてきた。


 俺はすぐにアリスの目の前に立ち、イーグラーの攻撃とぶつかり合う。


(クソ、もう持たない)


 正面からの攻撃とぶつかり合っていることより、先ほどの攻撃より数倍も重かった。


 それを察知したかのようにエミが小竜エア・ウィンドをイーグラーに放ち、左羽にもダメージを与えた。


(ここしかない)


 俺は、火玉ファイアーボールを放ちつつ、左右へ展開していく。


 動きつつ初級魔法を放っていることにより、疲労感が半端ないがイーグラーも困惑を隠しきれていなかった。


(よし、この戦い方は合っている)


 俺はそう思いながらも、イーグラーへ徐々にダメージを与えることができていた。


 そして、アリスとエミの魔法によって怯んだ一瞬を逃さず、俺がイーグラーの首を斬り落として戦闘が終了した。


 目の前にあるイーグラーの死体を目にしたとき、一気に体から力が抜け落ちて地面に座り込む。


「ダイラル大丈夫?」

「大丈夫、大丈夫‼」


 アリスがこちらへ近寄ってくるのに対し、折れた手を横に振って言った。


「それよりも倒せたな」

「うん‼ ダイラル、あの戦い方は何?」

「魔法を囮として使えば良いと思ったんだ」


 アリスやエミみたいに魔法の威力があるわけではないことから、モンスターにトドメを刺すことは難しい。


 なら、トドメがさせる剣術に対して援護する形で使えば良いと思った。それが今回はうまく刺さってくれた。


 だけど、イーグラーに通用するってことは、結構なモンスターには通用するってことだと思う。


(いい収穫だった)


 俺とアリスがイーグラーの死体付近に行くと、エミが緑良の翼を持ってこちらへ近寄ってきた。


「これで長期ダンジョンの依頼はクリアですね」

「あぁ」

「それにしても、あっさり終わってしまいましたね」

「エミ様の言う通りだね」


 まだ終わったわけではないから何とも言えない。だけど、実際、二人の言う通りスムーズに終わりすぎた。


「まあ、帰りますか」

「そうですね、ここに長いしても意味はありませんし」

「うん」


 そして、俺たちは休憩を挟んで一階層へ戻る準備を始める。その時、二階層の奥地で男性の悲鳴が聞こえた。


(この声って‼)


 俺たちは視線を合わせて声がする方向へ駆け寄ると、そこにはライドの胸倉をつかんでいる魔族が立っていた。


 すると、アリスの方向を見て言った。


「さっき話していたこと覚えているだろ‼ なら、見逃せよ」

「あ~運がいいですねぇ~」


 そう言って、魔族はライドを離して、こちらへ近寄ってくる。


「あそこにいる方から言われたので、あなたでいいですよ。私が利用する駒になってください」


 そう言った瞬間には、ライドたちはこの場から去っていた。

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