第7話 ダンジョン内


「あ、アリスさん?」

「うるさい。ちょっと待って」

「は、はい」


 そこから一分ほど同じ状態が続く。


(長くないか?)


 そう思った瞬間、アリスが俺から離れた。そして、少し顔を赤らめながら言う。


「それでは、魔法を教えますね」

「え?」

「だから、魔法を教えますね?」

「あ、うん」


(今までのはなんだったのか……)


 そこから、淡々と魔法の基礎を教わる。


 魔法とは、大気中にある魔素を体内に取り入れることによって、使用することが出来る。それに加え、個人の性格などによって、得意な魔法が決まっていく。


「ダイラルは火玉ファイアーボールを使っていたよね? なら、私と一緒で火魔法が得意なのかも」

「そうなのかな?」


 確か、原作のダイラルは初級魔法を最低限使うことが出来るが、それ以外の魔法は点でダメだった印象であった。


「まずは、初級魔法をつかってみよっか」

「あぁ」


 初級魔法とは、火、水、風、土の初歩魔法を示している。


火:火玉ファイアーボール

水:水雨レインウォー

風:風切エア・カッター

土:土壁ドレ・ウォール


 俺は一つずつ魔法を唱えていくと、アリスは驚いた表情でこちらを見ていた。


「すごい……」

「え?」


(何がすごいんだ?)


 呆然とアリスのことを見ていると、地面にひし形を書き始めた。


「この世界で四属の魔法を使える人って限られた人しかいないの。普通は二つ。どれだけ頑張っても三つ。自身が得意としている属性の対極にある魔法は使うことが出来ない」


 言われてみれば、原作でも全属性の魔法を使う人はダイラル以外いなかったなぁ。でも、魔族の力を手に入れたからダイラルは全属性の魔法を使える印象だった。


(あれ、もしかして俺って無能じゃないのか?)


 一瞬だが、そう思ってしまった。すると、アリスは少し困った表情をしながら言った。


「今日教えようと思っていたことが無くなっちゃった」

「じゃあさ、四大元素以外の魔法を教えてよ」

「あ~うん。私も回復魔法しか使えないけど……」


 アリスは、先程教えてくれた初級魔法以外の基礎を教えてくれる。


 四大元素以外に、魔法は光、闇が存在している。その中で、先程アリスが言っていた回復魔法は光に属している。


 光魔法や闇魔法は限られた人しか使うことが出来ない。それに加え、各種族によって特殊魔法も存在している。


「まあ、まずは今使える魔法を使いこなせるようになった方が良いと思う」

「そうだね」


 そこから、俺とアリスは初級魔法の練習を初めて一日が終わった。


 翌日、戦闘を行う際に、剣技以外に魔法を使ってみるが、うまく行かず今まで以上に苦戦のしてしまった。


(やっぱり二つのことを行うって言うのは難しいなぁ)


 そう思いながら、解決策を模索しながらダンジョンへと向かって行った。



 日が暮れる前にダンジョンの入り口にたどり着く。


(ここが、ダンジョン……)


 この前行ったダンジョンとは雰囲気が違った。


「今日はここで休んで、明日からダンジョンに潜りましょう」

「あぁ」

「はい」


 エミの言葉に俺たち二人が頷き、体力を回復させるという面も含めて、魔法の訓練を行わずに就寝した。


 翌朝、俺たち三人でダンジョンに入る。


 内装は、短期ダンジョンとあまり変わらない状況であった。


「ここの二階層にイーグラーが居ますので、一階層は探索せずに先へ進みましょう」


 俺とアリスはエミに従う形で先へ進んでいく。すると、すぐさまコウモリに近いモンスターと接敵する。


 まずはじめにアリスと俺が火玉ファイアーボールを放ち、一体ずつ倒し、最後に残ったのをエミが風切エア・カッターで倒した。


「やっぱり一階層はそんなに強い敵がいないね」


 アリスが言った言葉に俺も頷こうとした時、エミが言う。


「油断はダメですよ。ミノタウロスが現れるかもしれません」

「怖いこと言わないでよ‼」


(あれ、なんで俺たちがミノタウロスと戦ったことをしっているんだ?)


 確か、情報ではミノタウロスと戦ったとは言われていなかったはず。


「ですが、力を合わせればそこまで時間はかからずに二階層に行けると思います」


 エミの言う通り、道中で現れるモンスターは、三人で力を合わせると難なく先へ進むことが出来、半日もかからずに二階層へとたどり着いた。


 そこから、休憩を一回挟んでイーグラー探しを始めて行った。


 小一時間程経った時、ホブゴブリンと出くわし、前衛を俺が務め、後衛はアリスとエミが行う布陣で戦うと、五分ほどで倒すことが出来た。


 すると、頭上からこちらに突進してくる形で、イーグラーがやってきた。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る