【一章完結】推しキャラの悪役令嬢を惨殺するゴミキャラに転生してしまったので、二度目の世界では幸せに導こうと思います~ あれ? なぜか英雄って言われるようになっているけど、なんで?
煙雨
転生
第1話 転生
某有名RPGにドハマりしていた俺が、社会人四年目になった際、ゲームがライトノベル化した。
そこから、俺は寝る間も惜しんでライトノベルを読んでいると、一人の押しキャラが出来た。
公爵家でありながら悪役令嬢と呼ばれているアリス・ルーリア。他人にも厳しい一方、人一倍自分に対して厳しい性格。
だが、アリスは一巻の終盤で殺害をされてしまう。
(なんで、なんでこの子が死ななくちゃいけないんだよ‼)
口が悪くても、婚約者である第一王子のために頑張っていた。だけど、第一王子はアリスの行動を理解せず、新たな婚約者を作った。
あまつさえ、絶望に陥っていたアリスは暗殺されてしまった。
(こんなのひどすぎるだろ)
「ゴミじゃん」
俺はライトノベルを投げ捨てて、就寝した。
(できることなら、幸せな世界でアリスがやり直せるように)
★
目を覚ますと、そこは見知らぬ天井であった。
(ここはどこだ?)
今まで居た小さな部屋とは一変して、何畳あるか分からない部屋。それに加えて高級感のある大きなベット。
辺りを見回して、鏡の前に立つ。
(は?)
そこに映っていたのは、アリスと同様に悪役貴族として言われていたダイラル・ラークネルであった。
(え、なんで?)
見間違えるはずがない。俺が好きで読んでいた作品のキャラであるのだから。だが、俺が一番嫌いなキャラでもあった。
なんせ、こいつはアリスとは真逆で、何もできないのにも関わらず口だけは達者であり、最終的には悪魔と契約してアリスを殺す元凶になった存在なのだから。
「俺、死んだのか?」
いやいや、普通に就寝しただけ。それなのになんで。
現状に理解できないでいると、部屋の中に一人の女性が入ってきた。
「ダイラル様、朝食のお時間です」
「あ、ありがとう」
俺は呆然としながら、使用人について行く形で食堂へと向かった。すると、そこには父親と母親、兄が座っていた。
「ダイラル、無能なのに遅れて来るってどう言うことだ?」
「ご、ごめんなさい」
(こいつも苦労しているんだな)
兄---アルガンの目の前に座り、朝食を取り始めると父さんが言う。
「明日から学園生活が始まるが、ラークネル家に恥じぬようにしろよ」
「はい」
俺が下を向いていると、兄が言う。
「父さん、無能にそんなことを言っても無理ですよ。学園に通うだけでこの家に害をもたらすのですから」
「まあそれもそうか」
父さんと兄さんは嘲笑いながら、俺はこの場にはいないというような空気感で食事を始めた。
(はぁ)
食事中に嫌味を言われながら、時間が経つのをじっと待っていた。
(明日からどうしよう……)
すでに悪役貴族として名をはしている。それに加えて無能である。
(何の取り柄も無い俺に何ができるんだ)
「あ‼」
(俺は、アリスのために陰ながら幸せに導こう!!)
そう決意をした。
★
翌日。
学園入学式の日、公爵家であることより、クラスは貴族クラスに配属される。
そのため、教室に入ると、第一王子など主要人物が勢ぞろいであった。
(あ!)
俺が椅子に座った瞬間、クラスにアリスが入ってきた。
(可愛いなぁ)
透き通った金色の髪の毛が歩くごとにうっすらと揺れてドキッとする。
無意識にアリスのことを見ていると、一瞬視線が合う。すると、すぐに睨みつけてきながら視線を逸らした。
俺はボーっとしながらクラスを見ましていると、担任が入ってくる。
「今日からこのクラスの担任になったリーバだ」
細身でありながら、つくところには筋肉が付いている細マッチョと言われる存在。
そこから、淡々と学園の説明をしていった。そして、リーバ先生が三本の指を立てる。
「この学園には大きな行事が三つある」
一 ダンジョン攻略
二 魔剣大祭
三 新地祭
一つ目は、名前の通りダンジョン攻略。進級するためには、基礎的な魔法と剣術を学んだ後、ダンジョンに潜り倒したモンスターや到着地によって単位がもらえる。
二つ目は、魔法と剣術を競う祭り。ここで実績を上げればいろんな場所からオファーがかかり、職に困らない状況になる。
三つ目は、新地祭。簡単に言えば修学旅行的なものが年に一回行われる。修学旅行と違う所は、新地祭と言われるだけあり、新しい土地に出向き、新発見をすることが目的とされている。
入学して最初に魔法と剣術を学び、すぐにダンジョン攻略が始まる。貴族クラスに関しては、幼少期より魔法と剣術を学んでいたことから、基礎的なことは学ばず、すぐにダンジョン攻略に入らされる。
そして、夏の終わり頃に魔剣大祭があり、年度末に新地祭が実施される。
「ダンジョンには明日から入ってもらうが、一人で入ることだけは禁止だ。誰かしらと仲間を作って挑むこと。以上」
リーバ先生は必要事項のみを伝えて、この場を後にした。すると、クラス中が騒がしくなる。すると、アリスが第一王子---ライドに話しかける。
「ライド様、一緒にパーティを組みませんか?」
「あ、あぁ。でも、一人だけ組みたい子がいるんだけど良いか?」
「はい。どなたでしょうか?」
「この子だ」
ライドが手招きをして呼んだのは、伯爵家の女の子であった。
「アリス様、お初にお目にかかります。ルリ・ショーカと申します」
「よ、よろしく」
(あ、この光景、見覚えがある)
ルリとライドは学園入学時に出会い、徐々に惹かれ合っていく中。その始まりであった。
「明日からダンジョンに入ろうと思うが、もう一人ぐらいほしいな」
「そ、そうですね……」
(やばい、これだと)
ライドたちがあたりを見回すと、ほとんどの人たちがパーティを組んでおり、視線が俺の方に向いた。
「確か公爵家のダイラルくんだよね? 一緒にパーティを組まないかい?」
(やっぱりこうなったか……)
原作でも、俺はこの人たちとパーティを組んでいた。
だけど、当日は仮病を使いダンジョンにはいかなった。
俺が呆然としていると、アリスがこちらを睨みつけながら否定をする。
「ダメです。他の人にしましょう」
「なぜだい? 公爵家であり、いい身分ではないか」
「そ、そうですが……」
アリスの言うことはごもっともだ。ラークネル家は悪役貴族として名が通っており、実際兄貴が何人もの学生を退学にしたという噂もある。
「ダイラルくんはどうなんだい?」
(断れねぇ。いや、俺は陰ながらアリスをヒロインに導くんだ)
王族から言われたことを断ると言うのは、何かしらの理由がない限り厳しい。
「無能の俺より、もっとふさわしい人が居ると思います‼」
「いや、君しかいないよ‼」
「……」
俺が呆然としていると、ルリが言う。
「ダイラルさん、お願いいたします」
周りを見回すと、すでに断れない空気になっていた。
「は、はい……」
すると、一瞬だけ不気味な笑みを浮かべるライド。
「じゃあ明日の正午、広場の噴水前に集合で」
そして、俺の新たな人生が始まった。
この時はまだ、ストーリーが崩壊していることを知るよしもなかった。
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新作です。
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