第2話 初ダンジョン
ダンジョンとは、現状十階層までクリアされており、それ以降は未開の地とされている場所。
そんな場所に俺たちは向かうため、広場にある噴水前にいた。
(ちょっと早くつきすぎたかな?)
まだ俺以外誰もいない状況で少し後悔をしていると、数分も経たないうちにアリスが到着した。
(神様、ありがとう)
私服姿のアリスを見れただけで、俺はさっきまで後悔していた気持ちが無くなっていた。
「おはよう」
「おはよう」
「……」
(こういう時、何を言えばいいんだ!?)
前世でも二人っきりで女の子と話す機会が少なかったから、対処法が分からない。
(あ!)
「えっと、天気がいいですね」
「曇りだけど?」
「……」
すると、アリスが睨みつけてくる形で話す。
「私はあなたが一緒のパーティーであることを認めていないから」
「……」
「はっきり言って、ダンジョン内では知能の無いモンスターより、悪事の張らくことが出来るあなたの方がよっぽど危険だわ」
その言葉に呆然としてしまう。
「ダンジョン内でも最低限の会話以外、話しかけないでもらえる?」
「はぃ……」
その後、お互い無言の状態が続くこと十分、ライド様とルリが一緒に到着すると、怪訝そうな表情でアリスが言う。
「一緒に来たのですね」
(まあそうだよな)
婚約者が他の女性と一緒に来たらいい気分はしないに決まっている。すると、平然そうにライド様が言う。
「さっき会ったからね」
「そうですか」
「あぁ。では行こうか」
俺たちはこうしてダンジョンへと向かって行った。
★
ダンジョン内は、前世で言う洞窟と迷路を組み合わせた形であり、どこへ向かえばいいか分からない状況であった。
すると、アリスがあたりを見ながら言う。
「まずは、簡単なモンスターから倒しましょう」
「そうだな」
ダンジョンの入り口付近にいるモンスターを探していると、二体のコボルトと遭遇する。
(これがモンスター……)
ゲームでやっていた時は何も感じなかったが、目の前に現れると殺意を感じた。
俺たちが呆然とコボルトを見ていると、走ってくる形でこちらへ近寄ってくる。
(やばい‼)
恐怖により、体が動かない。俺が呆然としていると、ライド様が剣を抜いてコボルトの首を斬り落とす。
そして二体目のコボルトはアリスが魔法によって倒してしまった。
「案外簡単だな」
「そうですね」
すると、ライド様はルリの元へ駆け寄る。
「危なくなったり、きつかったら俺に言うんだぞ」
「はい‼」
(それって、アリスにかける言葉じゃないのか?)
俺はそう思いつつも、四人で先へ進んでいった。
一時間ほど歩き、数回ほど戦闘が繰り広げられたが、ライド様とアリスの二人でことごとくモンスターを倒してしまった。
すると、申し訳なさそうな表情をしているルリに駆け寄るライド様。一瞬こちらを見た後に言う。
「ルリは気にしなくていいんだぞ。王族や公爵家は民を助けるために英才教育をされているんだ。ルリはルリなりに成長すればいいんだ」
(俺への当てつけかよ……)
でも、実際実力がないのは事実だしな。
(なんで、俺は十六まで訓練してこなかったんだよ)
転生前の俺を呪った。
そして、一階層をクリアして、二階層へ行こうとした時、モンスターの大きな怒鳴り声が聞こえた。
(なんだ?)
俺たちが呆然としていると、左後ろからミノタウロスが現れた。すると、ライド様が言う。
「な、なんでこんなところにミノタウロスが居るんだ‼」
ライド様の言う通り、ミノタウロスは三階層以降にいるモンスター。こんな序盤にいるはずがない。
振り上げてくる斧に誰も反応できず、バラバラに吹き飛ばされてしまう。
その時、アリスが大声を出す。
「ライド様、逃げてください‼」
アリスはミノタウロスに火魔法を放ち直撃する。だが、ミノタウロスは無傷に等しい状況であった。
すると、ミノタウロスの矛先がアリスに向く。
(やばい)
俺がそう思った時には遅かった。ミノタウロスはアリスに攻撃を仕掛けた。アリスはギリギリのところで避けるが、二撃目の攻撃を受けてしまい、壁にぶつかる。
そして、トドメを刺そうとミノタウロスが斧を振り下ろした。その瞬間、アリスに抱き着く形で避けると、地面が崩れ、二階層へと落ちて行った。
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