第19話 次への道

「あれ、どうしたの?」

「ちょっと話したいことがあって」

「うん」

「そ、そっか。じゃあ中に入って」


 俺自身初めて入る屋敷に二人を招く。


(す、すごい……)


 シャンデリアや高級そうなじゅうたん。思っていたよりも内装が豪勢になっていて驚きを隠しきれなかった。


 俺は内装を探索しつつ、イスとテーブルが置かれている部屋を発見したため、二人を案内する。


 保冷庫に入っている果実ジュースを手に持ち、二人の前に置く。


「ありがと」

「いいえ、それでどうしたの?」


 俺は首をかしげながら二人のことを見ると、アリスが深呼吸を挟んで言う。


「ダイラル、学園で次何が行われるか知っている?」

「いや、知らない……」


 そういえば、アリスに聞いてくれってバルドさんが言っていたな。


「通常通りなら、魔剣大祭だけど、それは現状行うことが出来ない」

「そうだね」

「でも学園としては学生に単位を取ってもらわなくてはいけない。だから、新地祭を行うことになったの」

「え、そうなの?」


(シナリオと違う)


 一年次は通常通り、魔剣大祭が行われた後に新地祭が行われていたはず。


「ダイラルは新地祭が何なのか知っている?」

「まあざっくりは……」


 新地祭とは、名前の通り新たな場所を発見しに行く行事。パーティを組んで新地祭に臨み、少しでも情報を入手することが出来れば、目的が達成される。


 だが、この行事が学生の命を落とす可能性が一番ある。


「私はエミとダイラルと一緒に新地祭に出たいと思っている」

「あ、俺もだよ」


(まあここまで仲良くなったなら、俺も一緒に出たい)


「「よかったぁ」」


 二人はアイコンタクトをした後、安堵した表情をする。


「だけどさ、もう一人足りないよね?」


 新地祭に臨むには、四人のパーティを組まなければいけない。


「うん、そのもう一人をどうしようかなって思ってて……」

「そうだね」


 はっきり言って、このメンバーである以上、だれでもいいわけではない。適当に選んでしまったら、最初から連携が取れなくなってしまうのは明白だ。


「まあ新地祭まで少し猶予があるから、学園でもう一人を探そう」

「「うん‼」」


 その後、俺たちは雑談をして二人を返そうとした時、エミが首を横に振った。


「私、これからこの家に住む」

「は?」

「だって、家ないもん」


(ないもんって……)


「それなら私も‼」


 アリスも便乗する形で言ってくるが、俺は拒否する。


「アリスは実家があるからダメだよ。エミも新しく家が見つかるまでだからね」

「うん」


 エミは満面の笑みになり、アリスはムスッとした表情になっていた。


「でも今日は泊まる」

「え……」

「パパにも許可取ったから」


(バルドさん!?)


 俺はため息をつきながら頷いた。


「今日だけだよ」


 すると、二人は手と手を握りながら嬉しそうな表情をする。


 そして、俺の部屋とエミ、アリスの部屋を決めて就寝をした。


(推しキャラと一緒に家で寝るなんて……)


 ご褒美なのか、地獄なのか。


 俺はそう思いながら目を閉じた。



「第一歩だね」

「うん、でもエミだけずるい」

「あれなら押せばアリスもいけるよ」

「そうかなぁ」

「そうだよ‼」



――――――――――――――――――――――――――――――


 読んでいただき、誠にありがとうございました。

 一章が完結です。


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