第18話 爵位


 呆然としている俺は、国王に問いかける。


「一つ、質問をしてもよろしいでしょうか?」

「なんだ?」

「私は爵位をもらうほどの活躍はしておりません。それは私自身が一番わかっております」


 魔人と戦ったりしたが、結局倒したのはアレクサンダーさんである。それに加えて、城下町のモンスターを倒したのだって俺以外にもたくさんいる。


(それなのになぜ……)


「ダイラル君、君は過小評価しすぎだよ。魔人と戦い、時間を稼いだ。それだけでもこの国にいる何百、何千の人が救われたか。それに率先してモンスターを倒してくれた。それだけでも爵位をあげる価値はある」


(そうなのか?)


 俺はあたりを見回すと、兄や父親は睨みつけていたが、アリスやエミ、バルドさんたちは笑みを浮かべながらこちらを見ていた。


「爵位は不満か?」

「いえ……」

「君は時期に公爵家を出ることになる。なら、ここで爵位を受け取っておいていいと思うぞ」

「あ、ありがとうございます」


(ここはお言葉に甘えるべきだよな)


 俺はそう思い、国王の元へ駆け寄り、、男爵家のバッチをいただいた。すると、国王が立ち上がり、耳元で俺の身が聞こえる声で言う。


「ライドのために力を使ってくれてありがとう」


 俺は首をかしげながら国王の目を見ると、笑みを浮かべていた。


「では、これで報酬の儀を終了する」


 現実味がない中、この場を後にしようとした時、バルドさんと国王、王妃に引き留められて、三人のみで話すことになる。


 国王と王妃が俺の元へきて、頭を下げる。


「ありがとう」

「え?」

「ライドがあの時倒されなかったら、今頃近隣国に被害が出ていた。それにあいつも見ず知らずの人を殺すのは望んでいないだろう。だから、本当にありがとう」

「……」


(お礼を言われる筋合いなんてない)


 俺はライドが魔人化した時、殺そうとしたんだ。実の息子を殺そうとした奴にお礼を言うのは、気持ちがいいわけではないだろう。


「あまり納得していない表情だね」

「はい」


 そりゃあそうだろ。


「私はライドに普通の道を歩んでほしかった。だけど道を踏み外してしまった。それは私のミス。それをしりぬぐいしてくれたのは君だ」

「……」

「できればライドをもとに戻す方法を探したかった。だけど、それは望みすぎていること。あれは最善の策だったんだよ。君が後悔する必要はない」

「はい」


 国王はここまで俺のことを考えてくれていたんだ。


「本題に入るが、男爵の爵位を渡したけど、何かをしてほしいわけではない」

「え?」


 普通、爵位をもらうとそれなりの責務を負う。


(それなのになぜ?)


「君にはのびのびと生きてほしい。そして……」

「そして?」

「いや、なんでもない」


 俺は首をかしげていると、バルドさんが言う。


「これからも学園生活を勤しんでくれ」

「はい」

「まあ、魔剣大祭は延期になるだろうが、これからのことはアリスたちに聞いてくれ」

「は、はい?」


 そして俺はこの場を後にして、男爵家ように渡された屋敷に戻った。


 すると、そこにはエミとアリスが入り口前で待っていた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る