第17話 立ち位置


「おっと、二人の気持ちを聞かなくちゃだね。アリス、ダイラルくんのことはどう思っている?」

「わ、私は……」


 もじもじとしながら、俺のことをチラチラとみてくる。


「満更でもなさそうだね、ダイラルくんは?」

「お、俺は……。現状の立ち位置では無理ですね」


 俺の実家は悪役貴族。そしてアリスの実家は、今回の一件で国民からの地位を挙げている。そんな立ち位置で俺たちが婚約者になるのは良くない。


「いろいろと考えてくれているんだね。じゃあ、今回の件は保留ってことで」

「え……」


 バルドさんの言葉に俺は驚きを隠しきれなかった。


「俺はね、ダイラルくんのことをかっているんだよ。君は今後この国を担う存在。それなのに国民のためなら命も惜しまない。そんな存在めったにいない」

「ありがとうございます」

「だから、君のような存在をミスミス手放したくはない。これが私の意見だ。だけど、二人の気持ちも尊重してあげたい。だから保留ってこと」


 俺とアリスは呆然としながら、目と目が合う。


「えーと、これからもよろしく?」

「う、うん」


 そして、俺たちはこの場を後にすると、アリスが裾をつかんでくる。


「私はダイラルと一緒にいるの楽しいよ」

「……。俺も」


 そりゃあ、推しキャラと一緒にいるのは楽しいに決まっている。


「だからね、私を導いて‼」

「あ、うん」


(アリスを幸せにできる人に導くよ)


 満面の笑みで、アリスは先へと行ってしまった。


(それにしても今の表情、可愛かったな)


 俺も気持ちを高ぶらせながら、この場を後にして復旧作業に入った。



 数日にわたり復旧作業をしていると、エミが俺の元へとやってくる。


「ダイラル、アリスとの婚約はどうするの?」

「あの時。断ったよ?」


 そう、俺とアリスじゃ釣り合いが取れない。アリスにはもっとふさわしい人がいる。


「もし、もしだよ。私がダイラルと婚約者になりたいって言ったらどうする?」

「え?」


 呆然としてしまう俺に対し、エミは少しばかり真剣な表情をしていた。


「もしもの話」

「あ~うん。婚約者にはならないかな」


 はっきり言って、王族のエミと俺とじゃアリス以上に釣り合いが取れていない。


「なんで?」

「俺はさ、悪役貴族の次男。エミは王族だろ? 結婚するのに値する存在じゃないから」

「アリスの婚約を断ったのもそれが理由?」

「あぁ」


 すると、エミは納得したかのような表情をする。


「わかった」


 エミはさっそうとこの場を後にした。


(何だったんだろう?)


 そう思いながら、俺は通常業務へと戻った。そして、数日が経ったとき、王宮に呼ばれた。


 そこには、王族に加えてルーリア家、ラークネル家が勢ぞろいしていた。


 国王は深呼吸を挟んで話し始める。


「今回呼んだのは、ダイラルに対し報酬を与えようと思っている」

「おぉ~」


 その言葉に対し、兄と父がうれしそうな表情をした。


「今回の報酬は、ダイラルを単身で男爵家に爵位を渡すということだ」

「え?」


 俺を含めるラークネル家のみが呆然としており、ルーリア家とエミはニコニコと笑っていた。

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