第17話 立ち位置
「おっと、二人の気持ちを聞かなくちゃだね。アリス、ダイラルくんのことはどう思っている?」
「わ、私は……」
もじもじとしながら、俺のことをチラチラとみてくる。
「満更でもなさそうだね、ダイラルくんは?」
「お、俺は……。現状の立ち位置では無理ですね」
俺の実家は悪役貴族。そしてアリスの実家は、今回の一件で国民からの地位を挙げている。そんな立ち位置で俺たちが婚約者になるのは良くない。
「いろいろと考えてくれているんだね。じゃあ、今回の件は保留ってことで」
「え……」
バルドさんの言葉に俺は驚きを隠しきれなかった。
「俺はね、ダイラルくんのことをかっているんだよ。君は今後この国を担う存在。それなのに国民のためなら命も惜しまない。そんな存在めったにいない」
「ありがとうございます」
「だから、君のような存在をミスミス手放したくはない。これが私の意見だ。だけど、二人の気持ちも尊重してあげたい。だから保留ってこと」
俺とアリスは呆然としながら、目と目が合う。
「えーと、これからもよろしく?」
「う、うん」
そして、俺たちはこの場を後にすると、アリスが裾をつかんでくる。
「私はダイラルと一緒にいるの楽しいよ」
「……。俺も」
そりゃあ、推しキャラと一緒にいるのは楽しいに決まっている。
「だからね、私を導いて‼」
「あ、うん」
(アリスを幸せにできる人に導くよ)
満面の笑みで、アリスは先へと行ってしまった。
(それにしても今の表情、可愛かったな)
俺も気持ちを高ぶらせながら、この場を後にして復旧作業に入った。
★
数日にわたり復旧作業をしていると、エミが俺の元へとやってくる。
「ダイラル、アリスとの婚約はどうするの?」
「あの時。断ったよ?」
そう、俺とアリスじゃ釣り合いが取れない。アリスにはもっとふさわしい人がいる。
「もし、もしだよ。私がダイラルと婚約者になりたいって言ったらどうする?」
「え?」
呆然としてしまう俺に対し、エミは少しばかり真剣な表情をしていた。
「もしもの話」
「あ~うん。婚約者にはならないかな」
はっきり言って、王族のエミと俺とじゃアリス以上に釣り合いが取れていない。
「なんで?」
「俺はさ、悪役貴族の次男。エミは王族だろ? 結婚するのに値する存在じゃないから」
「アリスの婚約を断ったのもそれが理由?」
「あぁ」
すると、エミは納得したかのような表情をする。
「わかった」
エミはさっそうとこの場を後にした。
(何だったんだろう?)
そう思いながら、俺は通常業務へと戻った。そして、数日が経ったとき、王宮に呼ばれた。
そこには、王族に加えてルーリア家、ラークネル家が勢ぞろいしていた。
国王は深呼吸を挟んで話し始める。
「今回呼んだのは、ダイラルに対し報酬を与えようと思っている」
「おぉ~」
その言葉に対し、兄と父がうれしそうな表情をした。
「今回の報酬は、ダイラルを単身で男爵家に爵位を渡すということだ」
「え?」
俺を含めるラークネル家のみが呆然としており、ルーリア家とエミはニコニコと笑っていた。
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