第5話 エルフ国第一王女
(え、何この雰囲気……)
心配そうな表情でこちらを見てくるものもいれば、不気味な表情で見てくるものもいた。
俺は肩身を狭くしながら自席へと移動をしていくと、後ろの席の男子---カイが話かけてくる。
「えっと、大丈夫?」
「あ、あぁ」
(あ~、全員俺たちに何が起きたのか知っているのか)
「ならよかったです」
「一つ聞いてもいい?」
「何ですか?」
首をかしげながらこちらを見てくる。
「あの状況があったからってこんな雰囲気になるとは思わないんだ。何かあったの?」
「え、えっと」
カイはライド様とアリスのことを交互に見つつ、俺に耳打ちで言った。
「ダイラルさんが来る前、お二人が喧嘩していたのです」
「へ~。それで?」
「そ、その原因がダイラルさんで……」
「は?」
(なぜ俺が原因で喧嘩していたんだ?)
すると、俺とカイのもとへライド様が近寄ってきた。
「この前は本当にすまなかった」
「は、はい」
(謝る気ないだろ……)
はっきり言って、言葉だけでも伝えておこうって感じの表情と雰囲気を感じとれた。
「それでだが、今回の一件でキチンとした仲間と冒険をしたほうが良いという結果になった。そこで、ダイラルには申し訳ないが抜けてもらいたいんだ」
(あ~、そんなことがあったな)
ゲーム世界でもバックれた後、すぐに脱退させられていた。それに確か、この後すぐ王宮精鋭部隊として、パーティを組まれたはず。
「はい。分かりました」
俺は潔く受け入れると、アリスがこちらに近寄ってくる。
「なんで断るの? ダイラルは必要だよ」
「アリス、わかってくれ。ダイラルだってわかってくれているじゃないか」
すると、アリスはライド王子を軽蔑する目で見る。
「こんなことを言いたくはありませんが、私を見捨てた人たちとパーティを組むなんて嫌です」
「見捨てたわけではない。応援を呼びに言っていたんだ」
「そんなこと言われたって、ダイラルがいなければ、私は死んでいた。それが結果です」
「だが、このパーティには君が必要なんだ」
徐々にライド様とアリスがヒートアップしていく。
(やばい……)
これじゃストーリーが崩壊していく。だけど、アリスには幸せになってほしいし……。
「ライド様はルーリア家の後ろ盾が欲しいだけですよね? 私はそんなので命を落とすのは嫌です」
「婚約者にその口の利き方はなんだ‼」
ライドはアリスへ手を挙げようとしたので、とっさにライド様の手をつかんで止める。
「手を出すのはだめです。きちんと話し合ってください」
「部外者は黙ってろ」
ライドは、俺のことをにらみつけてくる。すると、クラスにエルフが入ってきてこちらに来る。
「ライド様、お久しぶりです」
「え、エミ様」
(え、なんで?)
ストーリーの中盤で出てくるエルフ国第一王女が現れた。すると、一瞬だが微笑んでこちらを見てくる。
「お話を聞かせていただきました。私が出した提案は覚えていますか?」
「……」
エミ様はため息を少し吐きながら言った。
「ライド様の意思を無下にすることもできません。なのでこういうのはどうでしょうか? これから行う長期ダンジョンでライド様の実力を示す」
「そ、そうだな‼」
「ですが、複数人パーティにいると、実力を示すことは難しいです。なので、ライド様ともう一人で行ってみてはいかがですか?」
「……」
エミ様の言葉に呆然としているライド。
「アリス様は拒んでいますし、ダイラル様はお話し的にアウト。なら、ルリ様と一緒にパーティを組むのが最善かと」
「そ、そうだな……」
「私も、次行う長期ダンジョンが終わり次第、パーティに合流させていただきます」
「わ、わかった」
ライドは俺に一瞬睨みを聞かせながら、この場を後にした。すると、アリスが言う。
「ごめん」
「い、いいよ」
「それで、私と一緒に長期ダンジョンに行ってくれる?」
この間行ったのは、短期ダンジョン。単位数も少ない。だが、長期ダンジョンともなれば、より実力も必要になるため、単位数も多くなるが、難易度も高くなる。
「俺でいいの? もっと強い人はいると思うよ?」
はっきり言って、今の俺じゃ力不足過ぎる。
すると、少し顔を赤くしながら言われる。
「私はダイラルとがいいの」
「‼」
(可愛いすぎかよ‼)
「じゃあ、一緒に行こうか」
「うん‼」
「それで、どこに行くの?」
「えっと……」
そういうと、エミ様がこちらに近寄ってくる。
「話を遮ってしまい、すみません。エミ・マートリアと申します」
俺とアリスも、エミ様に続くように頭を下げて挨拶をした。
「先ほど話した通り、ライド様の実力を示すということも名目に入っておりますので、ダイラル様とアリス様、そしてライド様たちには、エルフ国付近にある長期ダンジョンで行っていただこうと思います」
(これ、断れないよな……)
「はい」
「では、近日中には連絡いたします」
そういって、エミ様はこの場を後にした。
そこから、連絡が来る二週間、一人で剣術の猛特訓を初めて、とうとう長期ダンジョンへ向かう日が来た。
★
エミは夜空を見ながらつぶやく。
「さて、ダイラル様は本当にお告げの人なのでしょうか」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます