第一章17話『不自然』
怪我に差し障らない程度に手伝いを求められ、
「まるで戦場の
そして目と鼻の先まで戻ってきた少女は外傷以上に深刻なのか、今も
一瞬、(なにしてるんだろう?)と疑問を抱く
しかし今は一刻を争う状況であり、少女は(ううん、そんなことより早くこれを渡さないと……)と思い直す。
そして彼女の会話を遮る形で戻った少女は巾着袋を手渡すと、彼女の施す処置をそばで心配そうにじっと見守る。
「
「ありがとうございます。これは植物から抽出した保湿効果のある薬液です。応急処置ですがどうか
わざわざ言う必要のないことを、
すると彼女の皮膚は僅かに潤いを取り戻し、外的要因によって無意識下に行われた内部循環によって
「これでよしっと、
「えっ、もう終わったの?」
そう呟いた
そのため怪我の具合に対して不完全な処置ではないか? と心配の眼差しを向けると、彼女はすでに次の段取りに移っていた。
「ええ、これから
するとシエナに同伴していた和猫は自身の身体を大きく変化させ、少女の襟元を咥えるとそのまま首を捻って自身の背中に乗せていく。
その一連の流れを経た
――たのも束の間に、比喩表現ではない
その間に
そして彼女は
「それではお願いします」
すると和猫は
しかし猫が動き出した衝撃で背上で気を失っている
「もう少しスピードを落としてください。ただでさえ不安定な背中で支えながら乗り続けるのは大変なんですから。ですが木の大半が焼き払われているのでいつもより大きくなっていますね」
その後の
それは他者の心を覗くというもので、自然の恩恵とは言い難い、自然由来の力を指す
しかしそれ故に制約も多く、敵対者や自閉症持ちの人物のような彼女に心を開いていない人物の心には干渉することができない。
そのため彼女はこの力を過程把握、適切処置を行うにあたっての前段階で使用するなど裏方方面で重宝されそうな使い方をしていた。
和猫の背に乗ってからしばらくすると、巨大化した和猫は
(
募る不安と焦りから猫の背中で毛を巻き込んでぎゅっと拳を強く握ると、
――――バシャッ!!
三人を乗せた和猫は保護膜に勢いよく飛び込み、くぐり抜けるのと同時になぜか和猫は元の大きさに戻っていく。
見る見るうちに小さくなっていく猫の背中が彼女らのクッションになることはなく、徐々に面積を失う猫の背から零れ落ちた
だが一方の
「いたっ! ……あれ、さっきの猫さんは?」
「あの猫は少し特別なんです。
「もう、知ってたなら先に言ってよ」
「これを飲んでしばらく安静にしていてください。
焼かれた彼女の肉体は予め塗布された薬液によって微かに潤いを取り戻していたが、あくまでそれは塗布しただけの応急手当に過ぎず、同様の薬液を汲み取った水にも混ぜて経口摂取させると彼女は次に
「――さてっと、次は
診断を先延ばしにしたことを謝罪した
熱気にあてられた、あるいは火傷を負った。
など考えられるありとあらゆる可能性を考慮した彼女はある程度、目処を付けた状態で
しかし予想に反した少女の現状、及び心模様に
「――えっ、外傷ならともかくなんで熱気にも当てられていないんですか?? いくら安全地にいたといっても山火事以上の熱量だったんですよ?!」
「そうなの? でも私、何ともないよ?」
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