第一章10話『思惑と違和感』
そしてその様子を見てまた
話が一向に進まないと感じた
「早速で悪いんやけどちょっと事情が変わってん。明日國を出ることになりそうなんや」
「それって私も?」
「察しがようて助かるわ。けどウチが付いてるから安心しい」
「それなら私は明日までに
彼女と入れ違いで応接室に入ってきたシエナもお茶菓子の後片付けをするとすぐに部屋を出てしまい、部屋に二人きりになるのを待っていたのか、二人が退出したのを確認した
すると突如、
「わわっ、なにこれ??!」
理解し難い不可解な現象に
触れ合う皮膚どちらもが少女そのものだが、一方からはほのかに熱が伝わってくるのが少女にはわかった。
その部位は少女が今、指で触れている部位頬で温度は湯舟に張ったお湯と同程度、数字で表すと四十度前後だろうか。
抱いた恐怖心をまるで火の粉を払うかのようにして着用している衣服をはたく少女だが、第三者にはまるで幻覚を見ているように映っていた。
そんな少女に
「今、あんたから湯気立ってるやろ?
「……ここにいてもいいの?」
「もちろんや、階段やったら入口の横にあるからそれ使って上がり。部屋ん中に寝間着用意してるから早めに着替るんやで」
「うんっ!」
さっきまでの怯えた様子とは一変し、嬉しそうに言葉を返す
少女は嬉しそうに返事すると彼女の言葉に従い応接間を後にする。
そして説明通り、入口近くまで戻ってくるとそこから木造の階段を上り二階に上がっていく。
二階に上がると待っていたかのようなタイミングでシエナが前方から現れ、まるで高級旅館のような待遇で城内の構造や勝手のわからないであろう少女を部屋へと案内する。
「事前に準備はしておいたので今日はこちらでお休みください。あ、今日はと言いましたが
「ありがとうシエナさん」
シエナは応接間でのやりとりを経て苦手意識が薄れ、
知り合ってからさほど時間は経っていないしそれほど話し込んだわけでもない。
しかし比較的長時間同じ空間にいたこと、そして他二人が満遍なく話を振ってくれたことも相まって、時間以上に濃密なひと時を同じ空間で過ごした二人が距離を一歩、二歩と縮めるには十分だった。
いや、二人が互いの距離を縮めるため、
「――待たせてしまいましたね。
「ええ、ですが内容が内容なだけに内密にお願いします」
会話の相手は軽装を新調しに一足早く応接室を後にしたはずの
彼女は手に持っていた白いスカーフを一枚シエナに手渡し、静かに階下へ降りていく。
手渡されたスカーフを広げ、そこに施された刺繍を確認したシエナは表情を変えず、しかし動揺した口調で「まさか…破滅の一途を辿るにしても想定より遥かに早い……」と小さく呟く。
しかし次の瞬間には平常心を取り戻し、情報を整理しながら優先順位を明確にしていく。
「――いえ、それよりも今危惧すべきなのは彼女が身の内に抱える不確定要素ですね。状況が好転すればそれに越したことはないですがあなたが危惧するのも最もですし、微力な猫の手ですがお貸します」
一方その頃、二人の密談など知る由もない
湯に浸かっている彼女は神妙な面持ちではあったものの、その胸中を知る
手ですくったお湯を顔にかけ浴槽から上がるとそのまま浴室を後にし、彼女は自身に巻いているものとは別に白いタオルを一枚手に取ると片手で髪を拭きながら不満げに呟く。
「
近しい間柄の人間ほど接する距離感は難しいとはまさにこのことだろう。
第三者が相手ならばこんなに思い悩むこともなく即座に真偽を確かめていたであろう彼女だが、同時に自身の行動一つが自國を内部崩壊させる可能性を孕んでいることを彼女はよく理解していた。
そのため深く追求することができず、従者に感じた違和感を拭えないでいた。
「ほんま自由を
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