第一章11話『忙しない』
現在の時刻は深夜二時を大きく回っていて、城内はもちろん、
――そんな中、ケモ耳を持つ人物が
他にも応接室にあったものと同様の足の短い机があり、その上には数冊の書物が積まれている。
彼女はその中から一番上の古びた書物を手に取ると、ペラペラとページをめくりながら
「武器で言うたらウチが前衛、マナのことを踏まえてもあの
※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
シュミレーションに没頭しているとあっという間に時間が経過していた。
現在はまだ日が昇る前、一日の中で最も暗い午前四時頃で、
しかし
すると少女は「ふぁ~~」とまだ眠たげな声を上げながら目を覚ます。
「あれ…お姉ちゃん……?」
「
「昨日も
「う~ん、だってまだ夜だよ?」
「夜ちゃうよ、時間で
確かに彼女の言う通り、
しかし同時にその二つを解消する対策案も少女に伝え、これから少女が取るべき行動を明確に伝えていく。
「まずあんたの部屋に簡単な内容の書物用意させるわ。あとは日常生活と実践で数こなしながら徐々に吸収していき」
布切れからほのかに香る、鼻骨をくすぐる癖の強い匂いも少女の未知のその一つだった。
それは目覚めには最適ではあったが、目が覚めてきた少女の表情は次第に引きつり気味になっていく。
いや、彼女は部屋の前に置かれた紙袋を取りに行ったのだ。
そのまま取ってきた紙袋を少女に手渡すと、彼女は今度こそ本当に部屋を出る。
「これに
「これって――」
「ウチは部屋の前で待っとくから用意終わったら出てき」
この時、
そしてこれがそうなのだろうと直感した少女は受け取った紙袋をワクワクしながら開封すると、中には白と水色を基調とした軽装が上下セットで入っていた。
この二色は
そしてこの二色は露零(ろあ)本人が好きな色でもあり、配色、生地、デザインと全て気に入った少女は紙袋をひっくり返し、雑に中身を取り出していく。
すると
(わぁ~~~~~~!! 着てみたかった服だ! もしかして
(後でありがとうって言わなきゃ)と考えながら身支度を済ませて部屋を出ると少女は部屋の前で待機していた
「似合ってるやん。やっぱええ感性してるわ」
「えへへ」
そんな会話を交わしながら一階に降りると前方からシエナが現れ、彼女は二人をある部屋へと案内する。
彼女に案内された部屋に入るとそこには鮭定食のような、城で出されるにはやや質素に感じられる朝食が二人分用意されていた。
「うわぁ~~~~!! おいしそう!」
そして「はよ食べな冷めるで?」と言い、自身の向かい側に
彼女に促された少女も席に着いて鮭に手を付けると、美味しそうにパクッと一口、また一口と食べ始める。
(暖かくておいし~~!)
その朝食は焼き鮭をメインに惣菜、味噌汁、ご飯と和食と言えば真っ先に想像するだろう献立だった。
一切の会話無しに黙々と箸を進める
どこの誰とも知らない第三者の優しさに触れたわけじゃないのだからこれしきの事で感涙するのも変な話だが、少女には彼女が姉であること以外、過去の記憶の一切がないこともまた事実だ。
そして二人は朝食を食べ終えると
(あれ、昨日と何か違う?)
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