第一章7話『歪な世界』
「地上に三つ、雲の上と地下に一個ずつ國があるんや。まぁ、行き着いた國で過ごすんが普通やからそこは気にせんでええよ」
間髪入れず一方的に話を続ける
その後、再思考した少女は彼女の最後の言葉で湧いた一つの疑問を問い掛ける。
「私も
「無理強いはしてへんよ。でも推奨はせえへん」
だがしかし、恐らく
自身の記憶を話そうかと迷っていた
「そうや、言い忘れるとこやったけど國に当てはまらへん場所は全部未開って呼ばれてるんや。よう話題に上がるから頭の片隅にでも置いとき」
全て話し終わる前に
そんな彼女に話の主導権を完全に握られた少女は自分語りどころか質問をする間もなく、以降はただただ説明を受けるだけになっていた。
「んで最後に話すんはウチら人間と古代樹についてや。まずウチらは動物と
「うん」
「そこで重要になるんが
一通り話し終えたのか、注視していなければわからない程度に息を整える
彼女なりに最大限要約した説明なのだろうがそれでも一からの説明となるとやはり長々となってしまうもので、彼女が息を切らせるのも仕方のないことかもしれない。
だがそれ以降は疲労を感じさせる素振りを微塵も見せることはなく、再び
「……と、まあこんな感じちゃう? 他に聞いときたいこととかある?」
すると
それは
しかし彼女から返ってきたのは少女が求めていたものとは違い、
「名前ってなに? 私、生まれたときから――」
「ん? 名前なんか他人と区別するもんでそれ以上でも以下でもないやろ? みんな好きに名乗ってるで」
言葉一つで特定の感情を心から取り除くなど相当に高度で繊細な技術が備わっていなければできない芸当だろう。
しかし何か思うことがあったのか、
「別に今すぐ理解せんでもええよ? 言葉が伝わらへんことはなさそうやけど標準語の方が理解しやすいやろうし」
(
「へっ?」
彼女の言葉に思わず気の抜けた返事をしてしまい、
(やっぱりお姉ちゃん、私のこと覚えてないんだ…。お姉ちゃんとずっと一緒にいたんだから話し方なんて気にならないのに)
聞きなじみのない言葉でも、言葉自体の意味を
少なからず感情の取り払いによってできた心のゆとりが情報処理の促進に影響していたのだが、少女は自分自身の力と記憶のお陰だと思い込んでいた。
そんなことを考えながら自身の記憶を辿っていると、
(あれ、なんでだろ? お姉ちゃんとの思い出がぽつぽつしてる)
一方その頃、部屋の外では何やらがさつき始め、室内にいる
次の瞬間、聞き覚えのある声が突っ込み事故の如く勢いで障子越しから飛んでくる。
「ちょっとちょっと! なにしれっと私たちに押し付けようとしてるんですか!?」
「言っておきますがまだ
最初の声は感情を昂らせた
障子越しではあるが、おそらく主君である
そんな
次の瞬間、勢いよく障子が開き、外で待機していた二人が同時に部屋の中に突撃してくると彼女達は
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます