第一章1話『露雫』
かつて、世界はあらゆる
生まれた
ある時、そんな世界に
その者は後に万物の申し子と呼ばれ、
「刹那の命、明日をも見れぬ
この時、彼が目にした光景は一風吹けば、どこからともなく誕生誕生する人間がもう一風吹けば皮を失い白骨化し、さらにもう一風吹けばその白骨はまるでたんぽぽの種が飛んで行くかのように粉末状となって風と共に上空に舞い始めるというものだった。
生という概念を実感する間もなく生涯を終える薄命の数々、そんな彼らに
後にその名が広く知られることとなるのだが、このとき
後世を生きる者はそれを『
生い茂る木々の中、他とは一線を画すそれには古来より伝わる不可思議な伝承があった。
――古代樹は命を生み出す、と。
古代樹から滴り落ちた
※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
生まれ落ち、誕生した
幼く華奢な少女の風貌は、背中まで伸びた透き通るような半透明の白い髪。
年相応の幼く愛嬌ある顔立ちと、顔には似合わぬ知性の宿った水色の瞳。
服装は白を基調としたこれといって特徴のない質素なもので、手にはフードのついた黒いマントを持っていた。
生まれ落ちた
「ここから出ないと……」
ここにいるべきじゃない。
そう直感するのも無理はないだろう。
生みの親同然の
しかし、そんなことをたった今、生まれたばかりの
いや、
なぜこんなものが創られたのか? その答えはいくら歴史を遡ろうと、どこにも記されてはいない。
ある者の見解では≪
はたまた≪当時の世界は殺風景だったため、発展の意を込めて創られた創造物≫など様々な憶測が人々の間で飛び交っていたが、その全てを知るのは創造主である彼しかいない。
現在、
周辺には一本だけ明らかにスケールの違う太く、雲を突き抜けていそうな大樹がドン! と
さらにその川に沿うように人工的な石畳が敷かれていて、クリアで色彩豊かな
チャポンと音を立てて跳ねる魚に一瞬で目が釘付けになる
少女は跳ねるような軽い足取りでその魚を追いかけていき、しばらく歩いていると何やら足元に違和感を感じ、ふと目線を下に落とす。
するとそこには人一人が通れる程度の石畳が敷かれていて、それは川に沿って続いていた。
その人工的な石畳に気付いた少女は最初こそ浮かれ気分になるものの、歩いていくうちにどこか作為的なものを感じ始める。
「わぁ~、綺麗な石がいっぱいある! でも……自然にこうなったりしないよね?」
そんな心配も虚しく、少女の周辺には人っ子一人いないのだが。
その時、前方から明るく品のある声が聞こえ、その声は息を切らせながら
「はぁ…はぁ……待ってくださーい」
「えっ、ひゃあ!?」
声に気をとられていた
小動物の特徴でもある素早い動きを目視できず、接近を許した
その拍子に足元を見下ろすと、一匹の子猫が
子猫の特徴はクリーム色の毛並みに黒くつぶらな瞳を持つ和猫で、首元には真っ白なスカーフを巻いている。
「わぁ~~~~っ! 小さくて可愛い! あれ、首になにか巻いてる。さっきの声、もしかして飼い主さんかな?」
そんなことを呟くも、すり寄る子猫に愛おしさと愛着を同時に抱いた
すると子猫はくすぐったいのかまるで水を弾くように首を激しく左右に振り、同時に首元からツンと鼻につく独特な匂いを漂わせた。
「はぁ…はぁ……。すみません、悲鳴のような声が聞こえたのですがお怪我はありませんか?」
今度は至近距離から声が聞こえ、子猫に遅れて飼い主と
彼女は一度深く深呼吸をし、息を整えると再び
「この子、いつもは勝手に飛び出したりしないのですが……」
「う、うん。少しびっくりしただけだから大丈夫だよ」
彼女の風貌は色素の薄いがとても手入れの行き届いている綺麗な黒髪に灰色の瞳。
編み込んだミディアムヘアのその髪は少女にはどこか大人びて見え、
そして服装は白を基調とした和袖の服に膝下まである丈の長いスカートで腰元には刀を携えており、単色で質素な服装がより彼女の魅力を際立たせていた。
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