電子レンジと異世界と私 ～愛用の電子レンジが、異世界で私を助けてくれました。不思議パワーとポイントで、笑顔いっぱいにしちゃいます！～

中の人ぉ！

「アイラ、おやすみ。今日も店の手伝いありがとな」

「まっかせて！　明日も頑張るから！」

　頭を下げるお父さんに、人差し指と親指を広げて残りの指は閉じてVを作った。Vサインはこちらでは、じゃんけんの変則チョキの形。人の考える意思表示ってどこも変わらないんだなあ、と考えると面白い。

「早く寝なさいよ？　あと、もし３日連続で廊下に立たされたら……わかってるわよね？」

「ままままままっ、まっかせてえ！　おやすみなさい！」

　ヤバい！

　顔は笑ってるけど、お母さんの目から光が消えてた！

　ダッシュで逃げる。

　まさか学校から家に連絡に不名誉な連絡が入っているとは……！

　ちょっとだけ。そう、ほーんのちょっぴりリルの猫耳を多めに触って、ラルフの犬尻尾をモフってただけなのに。授業中、次の休み時間はどうやって二人をモフモフしようか考えながら、ジッと見つめてただけなのに。

　んで先生の話を聞いてなくて、指された時に笑ってゴマしてたら廊下に立たされた。世の中、理不尽だ。

●

「さてさて……気を取り直して。パンパカパーン！」

　無くさないように巾着袋に入れていた紙を取り出す。何が書いてあるんだろう、ドキドキドキ。中を恐る恐るチラ見する。やっぱり字が書いてある。

「おっと。何が書いてあっても驚いて大きい声を出したりしないように。すう、はあ。すうううう、はあああああ」

　部屋で朝晩叫び声を上げてたら、さすがにごまかしきれない。大目に見てくれているお母さんのツッコミ攻撃が始まるよ！

「……開けるよ、開けちゃいますよ～」

　ハマっていた無料の小説投稿サイトで見たことがある転生モノは、主人公チートなんだけどスローライフとか悪役令嬢転生、ゲームの世界のキャラになってましたとかが多かったなあ。

　……ハーレム、来ちゃいますか？

　こ、心の準備があ！

　チート魔法で『大鷲亭』をふっ飛ばしたりして、くふふ。私の左手が疼（うず）くぜ。……いやいや待って待って、落ち着け私。ちょっとそれはヤバすぎ。

　今はリルとラルフのお父さんとお母さんがあそこで働いてるんだし、誰かを傷つけて得る安泰なんてダメだ。闘うのなら、まっすぐ相手を見すえて拳を握りたい。

　それにやっぱり、そんなにものすごいものはいらない。家族や友達や知り合いと笑顔や幸せを共有できるものがいいな。

　実は怖くなってきただけなんだけど。 お手柔らかにお願いします、てへぺろ♪ あ、ネットの通販サイトでご飯や調味料スイーツやその他もろもろを買えるのとか、あれもいいな。

　ふう。

　緊張する。

　……せーのっ！

　ちらりん。

”　岡島未来（おかじま みらい）の転生に関して　”

　お、読める。

　日本語。

【メニュー　活性化しました】

「きゃ………………！！！」

　声でっかいよ、メニューの中の人ぉ！