大事なことだから二度言った

「おーい! おっはよー!」

「お、アイラ」

「アイラ、お、おはよ」

「……はよ」


 あ、しまった。

 普通に声掛けちゃった。


 今の私は前のアイラじゃない。岡島未来として生きた記憶を取り込んだ少女……いや、美少女。美少女のアイラなのだ。大事なことだから二度言った。


 爆誕推したんアイラたん、新生降臨だからね! ……いやいや、新生もいいけど新星の方がカッコいくね? いっそ超をつけて『超新星スーパーノヴァアイラ』なんてどう? 


「おいアイラ、大丈夫か? クネクネしてっけど」


 誰だ、なんちゃってロリBBAとか抜かしたのは! わーたーしーだ。あああ! また私のスキルが発動してしまった。ひとりボケツッコミ恐るべし。これさえなかったら今頃はユクラの町一番誰もが認める美少女なのに!


「ア、アイラ? な、何か変……」


 いやでもさあ、正直憧れだよね。私はそういうなんちゃってロリ属性大好きだったなあ。だってさ、可愛さとかあどけない美しさ全開のちみっこ美少女がだよ? 実はめっちゃ博識だったり強かったりとかしてさ。私はもう11才だからちみっこではないのが残念だけれども。ぜん私で計算すると3げっほゴホゴホ、永遠の16才という事にしておいてくれたまい。


 んでんで、主人公といがみ合ったり助け合ったりしながらイベントをこなしたり旅をするうちにラブ、はたまた両片想いになるとかのテンプレはヤバいでしょ! 鳥肌立つわ!


「おーいアイラ! 何をブツブツ言ってんだ、熱でもあんのか?」


 しかぁし! ロリ属性はまだセーフ……11才はロリとは言わないか? けど美少女感はてんこ盛り。前世でつちかった知識は十分! 私もそのテンプレに引っかかってるではないかっ! それに今の私、マジでスペック高いしなあ。


 身長はクラスメイト達よりほんのり小さめ。サラサラショートボブの茶髪にパッチリおメメ、整った顔立ち。このまま聖地に降臨したら大騒ぎになるだろうってくらいに可愛い。くそぅ、羨ましい……あ、私だった! くっふふふ、アガるぜえ!


 お胸さんは発展途上だけど大きくなる予感。というかこれだと中学生くらいの年になったら未来のカプ超えるんじゃね? さらば貧乳、やっほほい! 腰は細腰、けど意外としっかりしてるお尻がアヒルみたいで可愛い。神様、高スペックありがとうございます! なむなむ。


 これで未来の可憐で純情で優しくってユーモアあふれて……あといいところ何だっけ、ええと……。


「……大丈夫。アイラはいつもおかしい」

「そう、いつも残念で……何だとぉ!」


 このにゃん! どさくさに紛れて何を抜かすか! 可愛い顔して今日も言うことがえげつないったら……って、あれ。あれれ。


 みんなの視線が痛い。これはマズイ。


 いかんいかん、ここでボロを出す訳にはいかない。『アイラが変わった』ならともかく、『ガワ外側だけじゃなくアイラさんの中の人もいい味出してますね』『中の人に惚れました、結婚して下さいジュッテーム』『いい年こいて気持ち悪いっすね』とか別人疑惑を持たれる訳にはいかんのだ。


 誰だ最後のセリフ抜かしたヤツ。

 いや全部私だけどね、テヘペロ☆


 スキル発動してる場合じゃないってば! 冒険者を夢見るラルフ君はリルの後ろで『家政婦は見た!』みたいになっちゃってるじゃないか! というかラルフ君、立場逆だろ。リル守ってあげなよ……間違いなくリルの方が腕っぷしも度胸もあると思うけど。


 早く何か言わなきゃ。何か言え。どうにかしろ私。普段のアイラならこんな状況で何て言う? あああ、わかんなくなってきた! 


 あああああ、あうあうあうあう。

 あああああ、あうあうあうあうあう!


 輝いて、私のカラフルな脳細胞!


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