鑑定、メニュー、レンジ君。


 ディナータイムが終わって、みんなでご飯。テーブルに並んだ料理を試しに鑑定してみたら、豚肉の塩野菜炒めに肉じゃが、ビーンズサラダにコンソメスープと類似したものと出た。日本でもこっちでもみんな私の大好物!


 しかも鑑定君、ありがたい事にこっちの食材名や料理名を日本での名前と並べて表示してくれている。もしかしてめっちゃ有能? 君は有能、正にYou know! めっちゃ取りたい有給休暇、全く使えず異世界転移! うぇいうぇいうぇ~い! ……ごふっ。


  スキル、いい仕事してくれるなあ。矢継ぎ早に繰り出されるボケツッコミ時々自虐、本日の爆笑確率は10%……いや低すぎないか? 何でだろうとか歌った方がいいのかい?


 じゃなくて。


 そんな事言ってる場合じゃないってば。さり気なくシリアスを時空の彼方に連れて行かないでくれたまい。


 んでもって。


 食の鑑定スキル。

 メニュー。

 レンジ君。


 この三つを軸に説明、転生の事は極力言わない方向で済ませたい……というかそこまでは質問が及ばないんじゃないかという気がしてきた。


 そもそも転生や転生者という言葉が、元冒険者の娘のアイラとして生きてきた記憶のどこにもない。そうなるとこの世界に転生や生まれ変わりという概念が存在しない、まであるかもしれないのだ。


 だったら、可能性の薄いものをリソースに割り振っても仕方がない。万が一聞かれたらその時に考える。試験だってプレゼンだって想定外が一つもないなんて事は有り得ないのだから。


 食あたりで天に召されて、神様の好意で異世界に転生しちゃいました、なんて想定外もいいとこだったからね、ははは。


 ま、こんなところかな。あとはできるだけ誤魔化しや嘘は控えたい。未来として生きていた時は『直球勝負の岡島』なんて褒めてんだかけなしてんだかわからん称号貰ってたしなあ。……まさかこの称号に『極め』とかついたりしないよね?


 でもさあ、ひとつツッコんでいい? 類似って何やねん。あれか? 弟か? てれってってれって♪ うー! いやそれはルイー……


「アイラ、ずいぶんご機嫌ね。さては~、手に入れた能力やスキルを私達にお披露目したくって仕方がない感じ? もったいぶってないで早く教えなさいよ~、洗いざらい」

「ぶふ!」

「ちょっとアイラ!」


 あっぶな! 料理に向かって噴き出すとこだった! 何やってんだ私、どうしてこうも脱線するのか。それに路線違うからね! 岡島未来改め美少女看板娘アイラちゃんは『デロリーン♪ 鼻からぎゅーにゅー♪(荘厳なBGM)』とかやらないんだから! 多分! 恐らくぅ!


「ほらほら、可愛い顔が台無しだぞ?」

「うー」


 お父さんが楽しそうに笑いながら手拭いをくれた。優しいなあ。それにやっぱり美少女だって! 家族も認める美少女! ……が、台無し? 台無しレベルまで行ってたか、とほほ。


 ……食事が終わったらきっと家族会議が始まる。アイラ岡島未来のこれからに関わる大きな分岐点。そして転生した私がこの世界でダスティやエミルと共に幸せに生きていく為には、絶対に欠かせないイベントだ。


 前を向け、帆をかかげろ! かいぞ……ゲフンゲフン、オラは異世界で幸せになってみせる!

 

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