ぷぷぷ、お子ちゃま♪

 大変だ、大変だああ!

 お腹いっぱい食べたらうたた寝しちゃった!


 こんなんじゃブクブク太っちゃう! 

 そして午後の授業に遅れる!


 走れ!

 走るのだ!


 ……お店を出る時にギルドマスターとお父さんたちが難しい顔をして話してたけど何だろ。前みたいに、お母さんにギルドのお手伝いをしてほしいとかかな?


 でもあんまりいい感じがしなかった。気になるなあ……帰ったら聞いてみよ。今はとにかく走るのだ! ついでに目指せ、町一番のナイスバディで美人の賢いお嫁さんっ!


 ん?

 足音?


「ぬおおおおおお! アイラ、待ってくれ!」

「ふんにゅおお! むむ? トーマも遅刻?」

「まだ遅刻じゃねえしっ!」


 トーマが後ろから追いついて来た。

 お店のお手伝い、お疲れさんだね。


「め、メシ食ったら寝ちまった!」

「そうなの? ぷぷぷ、お子ちゃま♪」


 私もだけどね!


「アイラ、よだれのあとっ!」

「……えっ!」



「トーマのバカバカ、噓つき! めちゃ痛かったんだから!」

「ガキって言うからだ! それに俺だって痛かったんだぞ!」

「お嫁に行けなくなったらどうするのよ!」

「悪かったよごめん。ま、まあ、そん時は……」

「その時は召使いになって一生面倒見てよね!」

「何でだよ!」

「治療に集中できないから静かにしなさい!」

「「は~い……」」


 トーマのせいで転ぶわ怒られるわ、ひどいよ。ごろごろ転がっちゃったじゃん……。


①ヨダレって言われて頬に両手を当てた

②足がもつれて転びそうになった

③トーマの服をつかんだ

④二人で転がる

⑤泣きべそをかきながら支え合って学校に到着

⑥先生に治癒魔法をかけてもらう


 まあ、一人で泥だらけになるのは嫌だからトーマに助けてもらいました。そう、助けてもらったの。トーマがいけないんだからいいよね!


 これぞ、死なばもろとも。


 ん?


 また何かよくわかんない言葉が出てきた。でもさっきの感じを言葉にしたら、しっくりくる。本当に多いなあ、こういうの。


 んでも、それを考える前に私にはやらなきゃいけないことがあるっ!


「トーマの、トーマのせいで立たされちゃったでしょ!」

「アイラが子ども扱いするからだろ!」

「何よ、文句あるのっ!」

「お前だって一緒じゃねえか! いてて、髪引っ張るなって!」

「立たされてもケンカしっぱなしのお二人さん、反省してる? 廊下じゃなくってこわ~い魔物がいっぱい出る外壁門の前がいいのかな〜?」

「「反省してますっ!」」


 くう。

 廊下に立たされるなんて恥ずかしい……。


 先生に怒られてしまったじゃないか。

 トーマのバカバカ。


「なあ、アイラ」

「なぁによう」

「そんなに怒んなよ、悪かったよ」

「全くもう! 私じゃなくって他の人だったら絶交されちゃうんだからね……あれ、トーマ? やだ、どうしてそんな顔するの? 私本当は怒ってないよ大丈夫だよ。ごめんね」


 トーマ、泣きそうな顔してる。ど、どうしよう。何となく頭を撫でてみる。いい子いい子、泣いちゃやだ。


「……俺んち、店なくなるかもしれない」

「え、噓! 何で?!」

「『荒鷲亭あらわしてい』のオーナーと店長がこないだ店に来てさ」


 また『荒鷲亭』?!

 え、でも何で?


 トーマのおうち、道具屋さんだし……。

 まさかっ! 


「まさかウチみたいに引き抜きにきたのっ?」

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