【カクヨムコン10長編】電子レンジと異世界と私 ~愛用の電子レンジが、異世界で私を助けてくれました。不思議パワーとポイントで、笑顔いっぱいにしちゃいます!~
マクスウェルの仔猫
第一章 アイラと岡島未来(おかじまみらい)
和風って何?
「はあ! よっ! ほっ!」
厨房から元気のいい声が聞こえる。お父さん、今日も気合いが入ってるなあ。
どれどれ。
うわ、あんなにジャカジャカと鉄鍋をふるって中身が零れ落ちないって本当にスゴイ。おいしい料理を作る為に、冒険者たちと並んでも引けを取らないくらいに毎日身体鍛えてるもんね。
今作ってるのは
口に入れようとする瞬間、餡と炒めご飯の香ばしい匂いが鼻をくすぐって、たまんないんだよね。
ぐう。
うひゃ!
お腹鳴っちゃった!
だ、誰も聞いてないよね?
11才にもなって、お腹ぐうは恥ずかしい!
お嫁に行けなくなっちゃう!
あー、でもでもいい匂い。お昼の営業が終わったら、
ヒマだからフォークとかスプーンの光り物、お皿にコップを拭きまくって、椅子にテーブル、床掃除して……その合間にお客さんにお料理運んでる感じだけど、ご飯はいっぱい食べてもいいよね!
……ホントに『荒鷲亭』のせいでヒマ。ギルドの真ん前に、デーンだし。あんなところにおっきいお店出さないでよ。しかも隣のお店を買い取ってお店広くなってる。ぐぬぬ。
でも最初のうちは、お客さんの数は減らなかった。この街で一番美味しいって評判だったウチの店の人気は変わらなかった。お店の外で順番待ちの列が絶えなかったのに……。
●
荒鷲亭ができたばかりの頃、気になってこっそりと外から店内と外看板のメニューを見にいったことがある。
作り立ての、綺麗で広々とした空間におじゃれな椅子とテーブル。うちと同じくらいの値段で、うちよりも種類の多いメニューが食べられることを知って、私は焦ってお父さんとお母さんに報告しに行った。
「ウチはウチ、
お父さんとお母さんはそんな私に笑ってた。
お父さんの作る料理は美味しいし、どんなに忙しくっても顔いっぱいの笑顔で接客するお母さんは、もともとギルド所属の冒険者だったから、冒険者の気持ちや苦労が分かる。だから、美味しい料理と居心地の良さでウチは昼も夜も大人気だった。
何も変わらなかった。
そう。
お客さんが増えないことに焦った荒鷲亭が、ウチを目の敵にするようにいろいろなことを始めるまでは。
●
「エミル、餡かけ飯3つできたぞー!」
「はーい! ダスティ、次の注文票はここに置いとくわよー。アイラ、餡かけ飯のセットをギルマスのテーブルにお願いね」
「……」
「アイラ、どうしたの? 具合悪い?」
「……ほ? あああ、ごめん! 考え事してた!」
「もー。さあさあ、早く持ってった持ってった!」
「うん!」
失敗した!
お母さんに心配させちゃった。
今はお仕事に集中しないとね。
お盆にお料理を乗せて、と。
ああ、出来立ての餡かけご飯とウロウロ豚の串焼きにシャキシャキのサラダに和風っぽいさっぱり味のスープ……またお腹鳴っちゃうよ!
……和風って何?
最近多いなあ。
知らない言葉が頭に浮かんでくる。
「ギルドマスター、お待たせしました!」
「おお、来た来た」
「私も食べたいなあ……ひとくち下さい!」
「お前さんなあ……。まあ、育ち盛りだしな」
「と、いうことは?」
「ほれ、豚串をやろう」
「わーい! ギルドマスター大好き!」
ギッルマス!
ギッルマスぅ!
「ア・イ・ラぁ?」
「はうあ?!」
お、お母さんにそっこーで見つかった!
笑顔に青筋!
めちゃめちゃ怖い!
「もー。ザイホンさんたらアイラに甘いんだから」
「ははは、すまんすまん」
「あはははは、はひぃ?!」
お母さん!
ほっぺたそんなに引っ張ったら、伸びる!
伸びちゃう、あいたたたったたぁ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます