【幕間】岡島未来
” お父さんとお母さんと未来の貯金 ”
” お父さんとお母さん✘✘✘の貯金 ”
” お父さんとお母さんの貯金 ●年9月21日 ”
「はあ、はあ……ごめんね……親不孝、で……」
●
『よっこいしょ……ここですね、岡島未来の部屋は。ああ、主様も人遣いが荒い……何て事は全く思っていません、これっぽっちもです。だから天罰はご勘弁。誤解です、濡れ衣です。あ、そうだ。こないだ子供達と食べたカステラを帰りに買っていきましょう、うふふ……ん? 先客みたいですね』
●
「貴方、貴方! 引き出しにこんな物が!」
「美也、どうした大声を出して……通帳?」
「あの子、あの子…………ううっ!」
「9月と言えば、入院してた頃じゃないか?」
「いないって大騒ぎになった日ですよきっと!」
「未来……何て真似を……」
●
『ふむ? どれどれ、何があったか覗いてみましょうか。……おやおや、育ての親を最後まで看取るつもりで蓄えていた、と。その題名をわざわざ書き替えに来た訳ですか。ま、正常な思考ではなかったのでしょうね、遺された者の悲しみが増すだけです。ただし、必死で健気な行いである事は認めましょう』
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「あの子の、手紙……長生きしろだなんて、何を言ってるの?! 幸せにならなきゃ、長生きしなきゃいけなかったのは未来じゃない! ううっ、何で? 何でなの?」
「…………私にも見せてくれ」
“ しあわせ だた おとうさ おかさんありが と ながいき して みらい ”
「何で私達より先に死んじゃうの?! 神様! あの子が何をしたっていうんですか! 家族を事故で亡くしただけじゃなく、自分まで! ううっ……酷いですよ。酷い……逆境にもめげずに、あんなに優しくて前向きな子だったのに。私を連れて行けばよかったじゃないですかぁ!」
「よしなさい。未来の不注意でもある」
「でも!」
●
『そう、それが不可解です。これで六度目。何故この魂には不幸が付きまとう? 人を助け、時には導き、どんな逆境にもめげず前を向き……だが毎回些細な綻びからあっけなく命を落とす。いくら調べても、悪や魔に魅入られたという訳ではなかった。ただ運命の分岐において悪手を選び、生を終えていく』
●
「あの子はいつも他人を優先していた。私達にもどこかしら遠慮している節があった。周りに迷惑をかけない事で自分の居場所を守ろうとしていたのではないかと思ってしまう程に。未来にそう思わせたのは私達の、いや私の責任だ」
「そんな……私達は本当の娘だと思って……」
「こんな事になるなら、一人暮らしを何が何でも止めるべきだった。支えとなる伴侶が現れるまで未来と暮らすべきだったのかもしれない」
「あああ……未来……未来!」
●
『そんなに悔やむ事はないですよ。岡島未来は貴方達を愛していた。自分の居場所として守りたかったから常に気遣っていたのでしょう。それは魂に沁みついた苦難への反発から来た無意識の行動なのかもしれません。ですが、事象のあまりの不可思議さに今回は主様が直接動かれた。このままでは岡島未来がどんなに頑張ろうとも、いつまで経っても魂への負の影響が消えませんからねえ』
●
「さ、美也引き上げよう。未来が大事にしていた物は持ったかい? 他は業者に梱包を任せよう。ほら、立ちなさい。未来が見ているよ」
「うう……未来……未来……」
「あのお金はありがたく使わせてもらおうよ」
「何ですって?! よくもそんな事を!」
「私達のお金を出して、未来が心休まるお墓を作ろう。そして近い将来、未来にお願いをしてお邪魔させてもらおう。三人ずっと一緒だ」
「そうよね。それなら……未来と一緒なら」
「そうさ。僕らはこれからも家族なんだから」
●
『さて、健気な先客も帰った事ですしサクサクといきましょう。あと数日でこの部屋の雑多なモノは引き上げられてるそうですから、岡島未来が望んだモノ、望みそうなモノ……適当に行きましょうか。ええと、おや?』
【…………】
『ああ、貴方が電子レンジという方ですね。私は主様のお使いでやってきた天使です。名前は……長ったらしいので、エルで結構です。怪しい者ではないのでご安心を』
【……………………。】
『おやおや、不信感全開ですね……っておかしいですね。貴方から意思を感じます。もしかして私の言葉、わかっちゃったりします?』
【……、…………】
『これはこれは。実はですね、岡島未来は転生し、この世界とは異なる環境で生を受けます。そう! この私、エル様とぉ! 主様の御力あばばばっばばばばばっばば?!』
【…………………………(笑)】
『見られてた? 見てらした?! いや、でも私だって頑張ってるんですからちょっとくらい誇張してもいいじゃないですかあばっ?! タンマ、タンマです! ちゃんとしますから!』
【(笑)】
『ずいぶんと楽しそうですねっ!(怒)あ、そうそうここからが本題です。貴方はきっと岡島未来にたくさん愛されて昇華したのでしょうねえ』
【…………………………………】
『岡島未来が貴方を望んでいますよ。生まれ変わった彼女と一緒に違う世界で生きてみたいですか? どうです?』
【!!!!!】
ばっかーん!
『ぎゃあ! 膝に、膝にぶち当てやがりましたよ扉を! 何てことしてくれるんですか!』
【…………(´・ω・`)】
『ああ、嬉しかったんですね。わかりますわかります、謝らなくていいですよ? まるでホールケーキを目にした私のようでしたから。さて、後は適当に詰め込んじゃいますかね、ぽいぽいっと』
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