召喚魔法と魔力切れと。
気持ちがポカポカする。さっきまでの飢餓感が嘘みたいだ。
膝を抱えてほとんど何も食べずに、部屋のすみっこでみんなの帰りを待ってジッとしていた……あの時みたいな感じだった。
それを思い出して叫びそうになった瞬間、身体がジワリと温かくなった。その感覚を追っていると温かさが増して、空腹感が収まっていった。いつもの、ダスティとエミルの愛情に包まれているような感触。
こんなに幸せなのに私はまた未来の時みたいに突拍子も無い形で死んでしまうのだろうか。嫌だなあ、何とかなんないかな。
そうだポイント割り振ってみたらどうなるだろう生命力かな精神力も必要だいやここは大穴で一人ボケツッコミとかいやいやそんな訳あるか大事な所だよく考えろあああそういえばさっきポイント全部使っちゃったんじゃんせめて半分ぐらいにしておけばよか
……の譲渡終わったわ!
後はどうしたらいい!
震えが収まるまで身体を温めて!
声が聞こえてきた。さっきみたいにメニューの中の人や点からの声のような頭の中に直接響いてくる感覚じゃない。というか聞いているだけで嬉しくなる、いつもの声。愛する家族の声だ。
「アイラ、ほら早く目を覚ましなさい」
「こんなに激しい魔力切れは見た事ないが、どういう訳だ?」
「貴方、召喚魔法は使えないわよね」
「ああ」
「召喚魔法は普通の魔法とは違うの。召喚獣がその力の限り魔力を吸い上げようとする。しかもフランデルは神獣よ? 常人なら数秒でぶっ倒れるわよ。私でも単独で唱えたら一分も持たない」
マジですか。私も見事に数秒だった気がする。お母さんすっごいわ……あれ? 私どのくらい喋ってたっけ?
というか心配をかけたままじゃダメだ。話聞けるくらい意識が戻ってきたなら目、覚ませ! 声出せ、声出ろ!
「……うっぴょ」
しまった、変な声出た。
「アイラ?! ……もう、心配したんだから!」
「よかった、目覚めたか! ……大丈夫か?! 痛い所は? 苦しいとか辛いとかはないか?! あああ、よかった。神様感謝します」
目を開ければ、涙目のお母さんとガン泣きのお父さん。よかった。まだ私はこの世界で生きていいみたいだ。
そしてごめんなさい。こんな事になるならステイタスとスキルアップはしばらく様子見をしよう。ポイントは使い切ったはずだから貯める方法を調べつつ、今の生活を大事にして……ん?
お母さんの手が目の前、に?
「あいたたったたたぁ?!」
肩!
肩つねったら痛いです!
「ア・イ・ラ~? 魔法なんて教えた事ないのにどうしてこんな無茶したのか、あの箱の事を含めて洗いざらい履いて貰おうかしらねぇ」
「あ、あああ……いたたた!」
お、お父さんまで!
お耳、摘んだらダメえ!
「アイラ。お父さんとお母さん、心配したんだぞ?」
「いたたた……」
二人の手が離れ、哀愁が籠ったお父さんの顔と笑顔で青筋を立てるお母さんの顔が視界に入った。お母さんちょっと待って、その顔マジで怖い。
んでも、心配かけた私がいけない。調子に乗りすぎた。でもまさかあんな事になるなんて思いもしないでしょ……どんなイベントだよ。
「ま、体調が落ち着いたらでいいわよ。今日はお父さんとお母さんが代わりばんこで看病してあげるから。お父さん、消化にいいご飯で行きましょ、デザートは私が作るから。アイラ、部屋に持ってきてあげる」
「よし来た」
「ご、ご飯……食べに降りれるよ?」
「「ダ~メ!」」
「へう」
涙が出る。
幸せ過ぎて、嬉しすぎて。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます